#3
Bリーグ集客トップチーム支える、マーケベンチャーの力の源泉
【連載】突破せよ・スポーツ×ベンチャー(3)
プロバスケットボール「Bリーグ」が開幕する前年の2015―16シーズン。Bリーグの前身の一つ、NBLに所属する千葉ジェッツは平均観客動員数が前シーズン比倍増の約3600人に跳ね上がった。それを支えるウェブコンサルティングを担ったプラスクラス・スポーツ・インキュベーション(PSI、東京都千代田区)の平地大樹最高経営責任者(CEO)は、大幅な集客力の向上に貢献した成果に強い手ごたえを感じた。「事業の拡大に向けて大きな自信を掴んだ瞬間だった」と振り返る。
平地CEOは2011年にウェブコンサルを手がけるプラスクラス(同千代田区)を起業。14年にはプロスポーツチームやそれを束ねるリーグなどスポーツ分野向けに特化してウェブコンサル事業を展開する部署を立ち上げ、16年に同部署をPSIとして会社化した。
スポーツ事業部を立ち上げてからの道のりは決して平坦ではなかった。スポーツチームはデジタルマーケティングによって集客力を高めようという意識が低く、当初は需要がまったくなかったという。「需要がないところで必要性をどう理解してもらうか。(プラスクラスで住宅会社や通販会社など向けにウェブコンサル事業を展開しており、その実績を基に)一般企業のケースにおける投資対効果は説明できたが、スポーツを舞台にしたときの効果は我々も読めていなかった」。
ただ、転機は突然やってくる。「(サッカーJリーグの)北海道コンサドーレ札幌に民間企業からの出向者でITリテラシー(活用能力)が高く、デジタルマーケによる集客力向上の必要性を感じていた社員がいた。知人を介してその人とつながった」ことが突破口になった。
15年シーズンに数百万円の予算を活用したウェブマーケティングを担った。試合ごとにランディングページ(LP)を制作し、チケット購入サイトへの導線をわかりやすくした。LPでは試合のストーリーや試合観戦以外に楽しめるポイントなどを訴求。その上でLPをフックにウェブ広告を運用し、集客力を高めた。
その結果、平均観客数の前年比2―3割増に貢献した。この実績を受けて顧客になったチームが千葉ジェッツだ。Bリーグ開幕前年の15―16シーズン以来、現在もウェブマーケを担っており、その間、千葉ジェッツの平均観客動員数はリーグトップを走り続けている。
千葉ジェッツでの成功により、Bリーグのチームなどの顧客が増えたほか、仕事の幅も広がってきた。たとえばBリーグのレバンガ北海道ではプロモーション映像の制作を担い、その映像は試合会場の大型ビジョンで流した。さらに今後は集客だけでなく、スポンサーを獲得するためのマーケティング支援事業なども手がける計画だ。「スポンサー同士がつながり、ビジネス機会を拡大できるようなマッチングメディアを作りたい。そういう仕組みができれば、スポンサーになる価値が一層高まり、各チームのスポンサーが増える」。
平地CEOには自社を大きくしたい特別な理由がある。プロスポーツ選手のセカンドキャリアとしての受け皿になることだ。平地CEOは27歳までプロバスケ選手として活動しており、引退後の転職が思うようにいかなかった経験がある。
その中でなんとか人材業界に就職し、プロスポーツ選手のセカンドキャリアを支援できないか模索した。ただ、単純な転職支援の需要はなかった。「元プロ選手はプライドが高いし、企業側も彼らを受け入れるより体育会系出身の大卒を雇い入れた方がよいと考える」ためだ。
その後、違う支援の方法を検討する中でIT業界に転職し、成長産業であるその業界で自ら起業して元プロ選手の受け皿を作るという決断に行き着いた。スポーツ分野の事業に特化したPSIを立ち上げた理由は、企業としてスポーツ業界での存在感を高めるためだった。
「引退後の転職が難しいとプロを目指す選択がリスクになる。セカンドキャリアを準備できれば目指す人が増え、その結果、能力が高い人も増えて日本代表が強くなり、ファンも増えてスポーツ業界でお金が一層回るようになる」。スポーツ業界の好循環を生み出すため、事業拡大にまい進する。
【01】プロ野球・Jリーグチームのベンチャー協業、相次ぐ挑戦の理由と壁(11月27日公開)
【02】スポーツビジネスの舞台がベンチャー支援に適しているワケ(11月28日公開)
【03】Bリーグ集客トップチーム支える、マーケベンチャーの力の源泉(11月29日公開)
【04】若手起業家たちの挑戦はマイナー・アマチュアスポーツを変えるか(11月30日公開)
北海道コンサドーレ札幌が突破口に
平地CEOは2011年にウェブコンサルを手がけるプラスクラス(同千代田区)を起業。14年にはプロスポーツチームやそれを束ねるリーグなどスポーツ分野向けに特化してウェブコンサル事業を展開する部署を立ち上げ、16年に同部署をPSIとして会社化した。
スポーツ事業部を立ち上げてからの道のりは決して平坦ではなかった。スポーツチームはデジタルマーケティングによって集客力を高めようという意識が低く、当初は需要がまったくなかったという。「需要がないところで必要性をどう理解してもらうか。(プラスクラスで住宅会社や通販会社など向けにウェブコンサル事業を展開しており、その実績を基に)一般企業のケースにおける投資対効果は説明できたが、スポーツを舞台にしたときの効果は我々も読めていなかった」。
ただ、転機は突然やってくる。「(サッカーJリーグの)北海道コンサドーレ札幌に民間企業からの出向者でITリテラシー(活用能力)が高く、デジタルマーケによる集客力向上の必要性を感じていた社員がいた。知人を介してその人とつながった」ことが突破口になった。
15年シーズンに数百万円の予算を活用したウェブマーケティングを担った。試合ごとにランディングページ(LP)を制作し、チケット購入サイトへの導線をわかりやすくした。LPでは試合のストーリーや試合観戦以外に楽しめるポイントなどを訴求。その上でLPをフックにウェブ広告を運用し、集客力を高めた。
その結果、平均観客数の前年比2―3割増に貢献した。この実績を受けて顧客になったチームが千葉ジェッツだ。Bリーグ開幕前年の15―16シーズン以来、現在もウェブマーケを担っており、その間、千葉ジェッツの平均観客動員数はリーグトップを走り続けている。
千葉ジェッツでの成功により、Bリーグのチームなどの顧客が増えたほか、仕事の幅も広がってきた。たとえばBリーグのレバンガ北海道ではプロモーション映像の制作を担い、その映像は試合会場の大型ビジョンで流した。さらに今後は集客だけでなく、スポンサーを獲得するためのマーケティング支援事業なども手がける計画だ。「スポンサー同士がつながり、ビジネス機会を拡大できるようなマッチングメディアを作りたい。そういう仕組みができれば、スポンサーになる価値が一層高まり、各チームのスポンサーが増える」。
プロ選手のセカンドキャリア支援
平地CEOには自社を大きくしたい特別な理由がある。プロスポーツ選手のセカンドキャリアとしての受け皿になることだ。平地CEOは27歳までプロバスケ選手として活動しており、引退後の転職が思うようにいかなかった経験がある。
その中でなんとか人材業界に就職し、プロスポーツ選手のセカンドキャリアを支援できないか模索した。ただ、単純な転職支援の需要はなかった。「元プロ選手はプライドが高いし、企業側も彼らを受け入れるより体育会系出身の大卒を雇い入れた方がよいと考える」ためだ。
その後、違う支援の方法を検討する中でIT業界に転職し、成長産業であるその業界で自ら起業して元プロ選手の受け皿を作るという決断に行き着いた。スポーツ分野の事業に特化したPSIを立ち上げた理由は、企業としてスポーツ業界での存在感を高めるためだった。
「引退後の転職が難しいとプロを目指す選択がリスクになる。セカンドキャリアを準備できれば目指す人が増え、その結果、能力が高い人も増えて日本代表が強くなり、ファンも増えてスポーツ業界でお金が一層回るようになる」。スポーツ業界の好循環を生み出すため、事業拡大にまい進する。
連載「突破せよ・スポーツ×ベンチャー」
【01】プロ野球・Jリーグチームのベンチャー協業、相次ぐ挑戦の理由と壁(11月27日公開)
【02】スポーツビジネスの舞台がベンチャー支援に適しているワケ(11月28日公開)
【03】Bリーグ集客トップチーム支える、マーケベンチャーの力の源泉(11月29日公開)
【04】若手起業家たちの挑戦はマイナー・アマチュアスポーツを変えるか(11月30日公開)
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