DMMが街ごと電子通貨構想、ベルギーサッカーチーム買収1年の今を聞いた
Football事業部事業開発部の飯田竜貴部長インタビュー
DMM.comは傘下に持つベルギーサッカー1部リーグのシント=トロイデンVV(STVV)の本拠地スタジアム「スターイエン」のコネクテッド化※1を推進している。キャッシュレスや映像コンテンツの配信などにより、集客力を高めてSTVV運営事業の収益力を向上させる狙いだが、新たなビジネスとして独立させる可能性も見据える。スタジアムのコネクテッド化は欧州などのトレンドになりつつあり、その需要を狙う。
STVVの経営権取得から1年。現地で事業を推進するFootball事業部事業開発部の飯田竜貴部長にコネクテッドスタジアム事業の現状と展望を聞いた。
※1コネクテッド化:スタジアム内に高速インターネット環境を構築し、デジタル技術により、スタジアム観戦の利便性などを高める取り組み。DMM.comはSTVVやCandee、トランスコスモスと共同で観戦チケットの購入や駐車場の予約、スタジアムでのグッズ、飲食の購入などがスマートフォン一つで完結できる体制を構築する計画。>
-コネクテッドスタジアム事業の現状は。
「最初の取り組みとして従来のスマートフォンアプリを刷新し、アプリで電子チケットを買えるようにした。入場者のデータを正確に取れるようにして集客活動に生かしていく。次のフェーズはスタジアムのキャッシュレス化。第3フェーズではスタジアムでしか視聴できない独自の動画コンテンツを配信する計画だ」
-キャッシュレス化の具体策は。
「ベルギーのスタジアムでは現金の管理に携わる人を制限するため(スタジアム内だけで使える)ローカル通貨が昔からある。現金をその通貨に換金して1枚でドリンク1杯といったイメージだ。これを電子化してアプリで使えるようにする。これにより消費行動データを取得し、飲食やグッズの品ぞろえを検討するなどマーケティング施策につなげる。年内に試験し、来年7月をめどに本格導入する。その後にはシント=トロイデン市内でもその電子通貨を利用できるようにしたい」
-街でも使えれば消費行動データが一層蓄積できそうですね。
「街の飲食店もそのデータを基に(アプリの)プッシュ通知などを活用した集客活動ができ、地域の活性化にもつながる。電子通貨の価値も高まる。すでに地元の自治体には声をかけている」
-キャッシュレス化を進める上でベルギーならではの課題はありますか。
「他のクラブはカードを活用したキャッシュレス化が主流のため、我々もカード対応は必要と考えている。ただ、カードには利用者の属性情報がひもづいていないため、どのようにひもづけるかを検討する。また、スタジアム内がアプリ決済だけになると使えない人が出てくる可能性があるので、現状を見極めながら徐々に進めていく」
-スマホの普及率などに日本と違いはありますか。
「普及率は日本とあまり変わらないが、スペックが低いアンドロイド端末を持っている方が多い。このため、配信するアプリはシンプルさが求められる」
-第3フェーズとして配信する動画コンテンツはどのようなイメージですか。
「スタジアム内の無線LANにアクセスした人だけが視聴できる限定コンテンツだ。スタジアムに来る価値を高めたい。具体的にはロッカールームの様子や試合後のインタビューなどを想定している。ベルギーのスタジアム内にはホールがあり、観客は試合後にそこで飲食しながら試合を語り合う文化がある。その場や試合のハーフタイム中に楽しめる映像コンテンツを考えていく」
-コネクテッドスタジアム事業を外部に展開する考えはありますか。
「是非やりたい。実際に他のチームから引き合いがある。我々もそのために他のクラブでも導入できるように裏側のシステムを構築している。スターイエンはショーケースという位置付けだ。欧州や米国などでスタジアムをコネクテッド化する動きが進んでいる。スターイエンで実績を作って他のスタジアムや街に展開できれば魅力的な事業になる。チーム運営と離れたビジネスになる可能性もある」
-スターイエンを実証の場として日本企業に提供し、欧州進出を後押しする意向も示していますね。
「キャッシュレス決済の基盤が整えば、豊富な購買データが取得できる。日本の飲食店などがスターイエンに出展して味や色などの好みを調査し、それを足がかりに(ベルギーの首都である)ブリュッセルなど欧州に進出する流れを作れればよい」
-コネクテッドスタジアム事業の構想はチームの経営権を取得する時点であったのですか。
「実はなかった。クラブ運営をビジネスとして真剣に行っていく中で(経営権取得後に)入場者数を上げるという課題が上がった。スターイエンはゲンクやアントワープなど強豪チームが相手の試合ではほぼ満席になるが、格下相手ではなかなか埋まらない。1万4600人を収容できるスタジアムだが、平均入場者数は約6500人だ。対戦相手に依存せず来場者を増やすにはスタジアムに来る価値を高めなくてはいけない。その手段の一つがコネクテッド化だった」
STVVの経営権取得から1年。現地で事業を推進するFootball事業部事業開発部の飯田竜貴部長にコネクテッドスタジアム事業の現状と展望を聞いた。
-コネクテッドスタジアム事業の現状は。
「最初の取り組みとして従来のスマートフォンアプリを刷新し、アプリで電子チケットを買えるようにした。入場者のデータを正確に取れるようにして集客活動に生かしていく。次のフェーズはスタジアムのキャッシュレス化。第3フェーズではスタジアムでしか視聴できない独自の動画コンテンツを配信する計画だ」
-キャッシュレス化の具体策は。
「ベルギーのスタジアムでは現金の管理に携わる人を制限するため(スタジアム内だけで使える)ローカル通貨が昔からある。現金をその通貨に換金して1枚でドリンク1杯といったイメージだ。これを電子化してアプリで使えるようにする。これにより消費行動データを取得し、飲食やグッズの品ぞろえを検討するなどマーケティング施策につなげる。年内に試験し、来年7月をめどに本格導入する。その後にはシント=トロイデン市内でもその電子通貨を利用できるようにしたい」
-街でも使えれば消費行動データが一層蓄積できそうですね。
「街の飲食店もそのデータを基に(アプリの)プッシュ通知などを活用した集客活動ができ、地域の活性化にもつながる。電子通貨の価値も高まる。すでに地元の自治体には声をかけている」
-キャッシュレス化を進める上でベルギーならではの課題はありますか。
「他のクラブはカードを活用したキャッシュレス化が主流のため、我々もカード対応は必要と考えている。ただ、カードには利用者の属性情報がひもづいていないため、どのようにひもづけるかを検討する。また、スタジアム内がアプリ決済だけになると使えない人が出てくる可能性があるので、現状を見極めながら徐々に進めていく」
-スマホの普及率などに日本と違いはありますか。
「普及率は日本とあまり変わらないが、スペックが低いアンドロイド端末を持っている方が多い。このため、配信するアプリはシンプルさが求められる」
-第3フェーズとして配信する動画コンテンツはどのようなイメージですか。
「スタジアム内の無線LANにアクセスした人だけが視聴できる限定コンテンツだ。スタジアムに来る価値を高めたい。具体的にはロッカールームの様子や試合後のインタビューなどを想定している。ベルギーのスタジアム内にはホールがあり、観客は試合後にそこで飲食しながら試合を語り合う文化がある。その場や試合のハーフタイム中に楽しめる映像コンテンツを考えていく」
チーム運営とは離れたビジネスに
-コネクテッドスタジアム事業を外部に展開する考えはありますか。
「是非やりたい。実際に他のチームから引き合いがある。我々もそのために他のクラブでも導入できるように裏側のシステムを構築している。スターイエンはショーケースという位置付けだ。欧州や米国などでスタジアムをコネクテッド化する動きが進んでいる。スターイエンで実績を作って他のスタジアムや街に展開できれば魅力的な事業になる。チーム運営と離れたビジネスになる可能性もある」
-スターイエンを実証の場として日本企業に提供し、欧州進出を後押しする意向も示していますね。
「キャッシュレス決済の基盤が整えば、豊富な購買データが取得できる。日本の飲食店などがスターイエンに出展して味や色などの好みを調査し、それを足がかりに(ベルギーの首都である)ブリュッセルなど欧州に進出する流れを作れればよい」
-コネクテッドスタジアム事業の構想はチームの経営権を取得する時点であったのですか。
「実はなかった。クラブ運営をビジネスとして真剣に行っていく中で(経営権取得後に)入場者数を上げるという課題が上がった。スターイエンはゲンクやアントワープなど強豪チームが相手の試合ではほぼ満席になるが、格下相手ではなかなか埋まらない。1万4600人を収容できるスタジアムだが、平均入場者数は約6500人だ。対戦相手に依存せず来場者を増やすにはスタジアムに来る価値を高めなくてはいけない。その手段の一つがコネクテッド化だった」
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