あと0.01%でも終わらない…携帯電話“不感地域”を解消すべき理由

総務省が有識者検討会開始

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不感地域への基地局整備が求められている(NTTドコモ提供)
 総務省は、携帯電話の電波が届かない「不感地域」の解消に向け、有識者を集めた検討を始めた。不感地域は災害時に孤立する恐れがあるほか、企業や住民の誘致などに不利となる。総務省は携帯電話事業者や自治体と議論を重ね、2019年5月をめどに報告をまとめる。補助制度の見直しも視野に入れ、電波が届く「エリア化」を後押しする。

「住民からすると、非常に大きな問題だ」。岩手県政策地域部の藤田芳男総括課長は、声を大にする。総務省によると、携帯電話の人口カバー率は18年3月末時点で99・99%。一方、岩手県は同99・74%で全国ワースト。現在約3400人が不感地域に住んでいる。

不感地域は「企業も人も誘致しにくい」(藤田課長)ため、地方創生の要となる産業振興で大きな後れをとってしまう。さらには、労働力不足などを背景に、農業や水産業といった第1次産業でのIoT(モノのインターネット)活用が叫ばれる中、IoT化の流れに取り残される恐れがある。

総務省は携帯電話基地局設置費用の、2分の1から3分の2程度を負担し、自治体や携帯電話事業者のエリア化を支援している。それに応える形で携帯電話事業者らも、都心部はビル設置型の基地局、辺境地には鉄塔型基地局と、地域に適した基地局を敷設してきた。

しかし現在、こうした需要が高まっているのは、人口10人以下の集落や集落間を結ぶ道路のほか、登山道、離島など、電力設備や伝送路の新規敷設が必要な場所がほとんど。工期が長期化し事業者の負担額がふくれあがるため、事業化を見送るケースが増えているという。NTTドコモの田村穂積取締役常務執行役員は「補助負担額の割合を高める必要がある」と訴える。

一方、ソフトバンクの野田真モバイルネットワーク本部長は、補助制度の見直しと合わせ「エリア化の連続性を考慮した上での整備が必要ではないか」と提案する。

すでに不感地域付近でエリア化を進めている事業者が担当し、それに応じて政府の補助も手厚くするという案だ。「基地局整備には携帯電話事業者らが協調し、担当エリアを分けて実施することが必要」(同)と主張する。

不感地域にいる住民は、全国で約1万6000人。災害時を含め携帯電話が生活に欠かせないインフラとなった今、国も自治体も事業者も人口カバー率の“あと0・01%”に向き合う。投資の効率性をにらみながらの公共政策が試されている。
(文=大城蕗子)

日刊工業新聞2018年11月23日

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