【内容追加】カリスマ失った3社連合、ポスト・ゴーンで対立先鋭化も
連載「日産・ゴーン不正の衝撃」上・中・下
「1000万台クラブ」に異変
「日産自動車は外資系企業みたいなものだ」。国内の自動車メーカー首脳は、日産をこう捉える。経営危機に陥った日産に資本参加した仏ルノーが、カルロス・ゴーン容疑者を最高執行責任者(COO)として送り込んでから20年弱。この間、日産は“ゴーン色”に染まった。
2016年に燃費不正問題が発覚した三菱自動車もゴーン容疑者の素早い動きで日産の傘下に収め、ルノー・日産・三菱自の3社連合を形成。グループとして自動車業界での存在感や影響力を高めた。
トヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)といった世界販売台数が年間1000万台を超える「1000万台クラブ」にルノー・日産・三菱自連合も仲間入り。17年暦年の世界販売は約1061万台で2位となり、首位のVWと3位のトヨタの間に割って入った。
ゴーン容疑者は「業界1位になることは目標ではない。ベストを目指した結果にすぎない」と語っていたが、野心は持っていたはず。17年9月には3社連合で22年までに世界販売を年間1400万台に引き上げる新6カ年の中期経営計画も公表し、事業拡大への意欲をあらわにしている。規模を生かした先進技術の積極導入やコスト低減効果も強調していた。
しかし、ゴーン容疑者の事件を受け、仮に3社連合の枠組みが崩れることになれば構想は頓挫する。17年の世界販売台数は日産が581万台、ルノーは376万台。販売規模を考えると両社ともCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応に迫られる自動車産業の大変革期に、単独での戦いは避けたいところだ。研究開発費が年間1兆円を超えるトヨタ自動車でも「稼ぐ力をつけておかないと、先行投資に振り向けることができない」(小林耕士副社長)と危機感を募らせる。
VWは独アウディなどの有力ブランドを傘下に持ち、トヨタはマツダやスズキなどと緩やかな日本連合を組むなど1000万台クラブは厚みを増し、将来に向けて体制整備を急いでいる。そのような中で今回、世界トップ3の一角に躍り出た3社連合を束ねるゴーン容疑者の事件が起きた。もともと、ルノーの筆頭株主である仏政府は3社連合の「不可逆な関係」を望み、日産はルノーとの経営統合にあらがったとされる。この局面の内輪もめで対応を誤れば、業界再編の引き金になりかねない。
(日刊工業新聞2018年11月23日掲載)
日刊工業新聞2018年11月21/22/23日