歪んだガバナンス構造、本質はルノーが日産を支配する親子上場にあり

 日産自動車の内部調査で有価証券報告書虚偽記載など三つ不正が判明した代表取締役会長のカルロス・ゴーン容疑者。誘因として20年近い長期にわたる権力の一極集中が挙がる。今回の問題は日産のガバナンス(企業統治)の機能不全も露呈した。

“独裁”止められず、弊害は最悪の結果に


 世耕弘成経済産業相は20日の会見で、ゴーン容疑者の逮捕について、「トップへの権限集中が、この事案の原因の一つと見る向きもある。日産の取締役会が今後立ち上げる第三者委員会でガバナンスの在り方について徹底的に議論を深めてもらいたい」と注文をつけた。

 有価証券報告書の虚偽記載、投資資金の私的流用、経費の不正利用―。ゴーン容疑者が主導したとする三つの不正の背景には何があったのか。

 「長い間権力の座にいたことによる弊害が出た。(ゴーン容疑者)一人に権限が集中していた」―。日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は19日の会見で厳しい表情で繰り返した。

 ゴーン容疑者が仏ルノーから日産に送り込まれたのは1999年。日産の最高執行責任者(COO)として自身が策定した「リバイバルプラン」でリストラや調達先の絞り込みなどを断行し、経営危機にあった同社をV字回復に導いた。17年に社長を退任したが、その後も経営に大きな影響力を持った。

転機は05年、CEO兼務から


 西川社長は、ゴーン容疑者に権力が集中した転機を「05年だった」と述懐する。ルノーと日産のCEOを兼務した年だ。「日産を率いてきたゴーン容疑者がルノーの責任者になることは会社としていいことだと思った。将来どういう影響を与えるか議論しなかった」と悔やむ。

 ゴーン容疑者は、今も日産の約43%の株を持つルノーの会長兼CEOで、日産の取締役会議長だ。「注意しなければならない権力構造だった」(西川社長)と振り返る。

 安東泰志ニューホライズンキャピタル会長は、今回の問題における企業統治着目点として、「不正を行ったゴーン容疑者が代表取締役という点」を挙げる。

 平社員が不正をした場合、上長や取締役会を通じて注意や処分をする。一方、代表取締役は大前提として“善なる者”として扱う。そのため、代表取締役に不正があった場合は、選任側の問題であり、適切に選任されていたかが重要だ。その点は果たしてどうだったのか。

 日産は取締役会議長が中心となり取締役会で代表取締役を選任する体制だ。指名・報酬委員会は設置されていない。このため、取締役会議長であり、カリスマとして君臨するゴーン容疑者の意向が強く反映する形で報酬などを事実上決定してきたとみられる。

 加えて、ゴーン容疑者は連合を組むルノー会長の権限として役員の選任などに影響を及ぼすこともできる。そのため、安東会長は、「選任という点では同委を設置することで制度として不正を防げた可能性はある」と訴える。

 ゴーン容疑者に権力が集中したことでその突破力で連合による事業拡大を推し進めた一方、企業統治は機能不全となるなど、連合の功罪が浮き彫りとなった。

 西川社長は「歯止めをかける体制が足りなかった。経営者として猛省する」と語る。独立社外取締役や外部の第三者らを交えた調査委員会を立ち上げ、ガバナンス体制を見直し、改善点を探る。

 西川社長は「特定の個人に依存した形から抜けだし、維持可能な体制を目指すために、皆さんと相談する。良い見直しの機会にしたい」と述べた。
               

(特別取材班)

日刊工業新聞2018年11月21日「深層断面」から抜粋

安東 泰志

安東 泰志
11月21日
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本来、代表取締役会長が不適任だとか、報酬が過多だというのが取締役会の総意なら、それは取締役会(本当は社外取締役が過半数の指名委員会や、報酬委員会)で会長の解任決議をすれば足り、さらに総会で取締役に選任しなければ済む話なのに、検察の力を借りなければならなかったのは、ルノーが日産の43%を保有している親子上場の状況だからだ。本質的な問題は、この歪んだガバナンス構造にこそある。

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