ゴーン逮捕で激震、3社連合の今後は?その成り立ちを振り返る
「常にベストを目指すが、1位自体が目標ではない」(17年1月ゴーン氏単独インタビュー【2/2】)
-5年後、10年後のアライアンスの姿をどうイメージしますか。
「アライアンスが上にあって、主に共通の技術やプラットフォーム、サービス開発などをやりながら、各社がその下で、日産であれば『日産』『インフィニティ』『ダットサン』、ルノーであれば『ルノー』『ダチア』『ラーダ』、三菱自であれば『三菱』というブランドを持ち、ビジネスを中心に集中して取り組む。こんな形の仕組みになるだろう。各社は個別の会社として存続し、自立性を持って事業をする。それでいて基本的なビジネスの要素は共同開発をする」
-さらに新しいメンバーを迎え入れられる余地はありますか。
「出来ない理由はない。アライアンスのレベルでは共通化だ。下に各社がある。その数は三つでも四つでもいくらでもできる。数が多くても問題ない。もちろんマネジメントを担保しないといけないが。各社の足並みをそろえないといけない」
-ゴーンさんの経営者としてのゴールは何ですか。
「どのような経営者であれ、目標は持続可能性を実現することだ。会社と業績の持続可能性だ。会社の成長と利益と健全性を維持することが第一だ。二つ目の目標は、常にベストを目指すことだ。魅力ある車、サービスを魅力ある価格で提供する。通常はベストな人がサイズが大きい。いい仕事をしてない会社が業界をリードすることはなかなかない。1位自体が目標ではない。それは結果だ。いい仕事をしたからこそ結果的に1位になる。いい戦略と実行力あってこそだ。『私は1位になりたい』と言えるようなことではない。だが1位になる可能性はある。コスト、品質、技術、戦略で戦っている。今はトップ3のグループだ。フォルクスワーゲン、トヨタ自動車、当アライアンスで年販規模のわずかな差があるが、その差に意味はない。意味があるのはスケールだ。他のメーカーに対して、ハンディキャップを持たないことだ。スケールは利点だ。1位になることはうれしい。どうでもいいとは言わない。でも結果だ」
日本には多くの財産がある
-アライアンスにとって、日本の経営資源の位置づけはどうですか。ゴーンさんは日本のモノづくりを以前から評価しています。一方で、新分野の台頭で、車はモノづくりからサービスに重要性がシフトしています。日本の位置づけは変わるのでしょうか。
「日本には多くの財産がある。明らかに最大の優位性はモノづくりにある。一緒に協力して何か作り上げる能力あり、しかも一貫して足並みをそろえて実際的に協力できるという文化がある。しかも細かいところにこだわりがある。いい仕事に対する誇りを持っている。それが日本の強みだ。商品もサービスも同じだ。車業界はハードを売ることは大事だ。サービスやアプリを販売することもこれから重要になる。両方やらないといけない。すばらしい車づくりをしながら、サービスの開発もしないといけない。日本の強みはサービスにとっても重要な要素だ」
-米国や英国などで自国第一主義が広がっています。アラアインスの成長戦略に、どんな影響を与えうるでしょうか。
「政策が国で変わった場合、それには注意を払わないといけない。特に米国は第二の市場だ。政策の変更に対して、車メーカーは適用し順応しないといけない。好き嫌いではない。なぜなら世界各地で販売しているからだ。至るところで政権は交代する。どの国でも起こりうることだ。常に新しい現実、環境に適用している。英も米も同じことだ。実際の決断がどうかをきちんと見極めないといけない。決断が下される前に(為政者は)言いたいことをいろいろ言う。そこには事実でないものも入ってくる。実際に下された決断内容に目を向けないといけない。(英国がEUを離脱する)ブレグジットもまだなされていない。言葉だけだ。交渉は何年もかかるかもしれない。言葉だけにのせられてはだめだ」
-昨秋、英国のメイ首相と直接面会して、英工場の投資継続に関して公約を得ました。それ以降、メイ首相がいわゆる「ハードブレグジット」を表明しました。投資計画に変更ありますか。
「サプライズはない。変更はまったくない」
-日産の米国工場はフル稼働です。米国では需要拡大も見込まれますが、供給を増やすための能力増強は米国でやりますか、他国でやりますか。
「新しいルールが制定されるのを待つ。(トランプ大統領は)就任したばかりだ。新しいルールに合わせる。われわれとしてはもっと北米での能力を増強しないといけないの明らかだ。なぜならフル稼働しているからだ。全体需要も引き続き拡大していくと予想される。能力をどうするかについて、どこかで決断を下さないといけない。ただし、決断は新しいルールに基づかなければならない。今存在しているルールは北米自由貿易協定(NAFTA)だ。今後、ルールに変更があったらそれに合わせる」
(文=池田勝敏、日刊工業新聞電子版 2017年2月9日掲載)
※肩書き、内容は当時のもの