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ゴーン逮捕で激震、3社連合の今後は?その成り立ちを振り返る

ゴーン逮捕で激震、3社連合の今後は?その成り立ちを振り返る

カルロス・ゴーン氏


アライアンスの文化はまさに協業の精神(17年1月ゴーン氏単独インタビュー【1/2】)


 -三菱自動車を仲間に入れて、ルノー・日産自動車アライアンスとして業界トップグループに入りました。他のトップグループと比べた優位性は何でしょうか。
 「他のグループに比べはるかに多様性が高い。アライアンスは3社がひとつになっているが、他のグループは企業の数では1社だ。ルノーも日産も三菱自動車も自立性を持ち、それぞれに戦略がある。だからこそ、ぶれない活動ができる。はるかに多くのアイデアが発想できる。ルノーは主に欧州とロシアとブラジルでプレゼンスが高い。日産は北米、中国、日本で強く、三菱自は東南アジアで強い。強みが多様化しているのは利点だ。消費者にとっていいことではないか。スケールがあるからコスト効率化でき、価格設定も競争力が高いものになる。商品群も広くなる。違う会社が複数のブランドを扱っている。1社が複数のブランドを扱うよりアライアンスの方が豊かだ。これがアライアンスならではのことだ」

 -自動運転やつながる車、シェアリングなど新分野が台頭しています。アライアンスはこれまで車メーカー同士の協業で成功してきましたが、今後はさらに文化が異なる異業種との連携が求められています。これまでのノウハウがどう生かされますか。
 「おっしゃるとおり、自動車業界は自動運転、シェアリング、コネクテッドが重要になっている。加えて電気自動車(EV)も重要だ。異なる要素が将来台頭してくる。われわれは他の会社と協力して、こういった技術を搭載した車を提供しないといけない。コネクテッドではマイクロソフトとやっている。自動運転はほとんどの開発は社内で行っている。ウーバーやグーグルなど新たな価値をもたらす企業とも協力している。EVはすでにパイオニアとアライアンスを組んでいる。バッテリーやモーターのメーカーともますます協力していく。協業は将来の車とサービスにとって重要な要素だ」

 「アライアンスの文化はまさに協業の精神だ。日夜各社が協力しているのがアライアンスだ。難しいのはわかるだろう。というのは業界で成功している例がないからだ。買収したとしても、買収する側とされる側の関係で問題が発生する。アライアンスは複雑で難しいことだ。必ずしも成功はしない。各自動車メーカーが同じ傘で協力してプラスの生産的な協力を実現している。こういった複雑な領域で成功したのは、サプライヤーやハイテク企業、IT企業と協力する上で利点だ。ダイムラーとも多くのサプライヤーともうまくいっている。アライアンスの文化があるからこそ、アライアンスの従業員は、開発部門も購買部門もマーケィング部門も慣れている。コンフォートゾーンを越えるのに慣れている。自らのテリトリーを越えることを恐れない。必要なものに手を伸ばすことを恐れない。そのために他のメーカーと協力できる。これは大きな優位性で文化の一部だ。一朝一夕ではできない。何年もの準備が必要で心構えも醸成しないといけない」

三菱自もスケールメリットを享受


 -今アライアンスは複雑だとおっしゃいました。三菱自が加わったことでメンバー間の関係はより複雑になりませんか。
 「大きく複雑化するとは思わない。なぜなら全く同じ関係を適用するだけだ。ルノーと日産の関係のルールを三菱自に適用することだ。ルールは変わらない。若干微調整は必要かもしれないが。三菱自はスケールメリットを享受できる。三菱自は大きな見返りがあるからアライアンスに適用したいと考えている」

 -アライアンスのメンバーが増えると、各ブランドの個性維持とシナジー追求の両立が難しくなりませんか。
 「ルノーと日産の関係は17年間維持してきた。現時点でブランドが混同されることは全くない。お客様が比較検討をしないのだ。日本と米国は日産の存在感が高くルノーが低いから簡単だが、欧州は二つのブランドが存在して、きちんとブランドを確保している。混同されていない。重複もしていない。ルノーと日産で証明してきたからこそ、三菱自でも証明できる。自信がある。だからこそ、三菱自がアイデンティティーを維持すると主張してきた。だから益子(修社長)さんに(社長に)残ってもらった。益子さんは三菱自のシンボルだ。混乱はない。社風もそのまま尊重しながら、ブランドの中身も変えない。シナジーを生み出すと言っているのは効率化によるシナジーだ。コストや投資の効率化、専門性の共有などだ。それでいて各ブランドは社風に応じて仕事をしていく。その条件があるからこそ、混乱のリスクを避けられる」

 -三菱自会長に就いて1カ月が過ぎました。改めて三菱自の潜在力をどう見ますか。また新たに支援が必要だと思うことありますか。
 「二つの潜在力を持っている。会長になる前から分かっていたことだが。1つは大きく成長できることだ。ここ数年、年販100万台で横ばいとなっている。ブランドの潜在力ははるかに大きい。次期中期計画を策定して、益子さんの指揮の下で(成長を)実現できる。次期中期計画はこの会社を拡大し、成長させることが目標の一つだ。日産もルノーもサポートできる。なぜなら、三菱自は多くの市場で販売しているが、プレゼンスが低いところがある。例えば、米、欧、ロシア、ブラジル、中東だ。ブランドにとって潜在力がある。第二は利益だ。購買部門を共用すれば、かなりのシナジーを三菱自にもたらす。100万台のメーカーが、同じやり方で1000万台のような購買はできない。技術へのアクセスも増える。自社で開発する必要がなくなり、かなり節減が見込める。三菱自は生産を委託している地域がたくさんある。アライアンスがはるかにいい条件を提示できる。もっと効果的な条件で生産ができる。原価低減を通じた利益も好機だ。もちろん実現しないといけない。アイデアが足りないと言うことはない。三菱自をどう回復させるか、より高い成長、利益を上げるために、どうするかのアイデアはたくさんある。益子さんはこれを意識している。なぜなら、私がV字回復を期待しそれをサポートしていきたいと考えているからだ」

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