中外製薬が創薬研究で“中分子”に着目する理由

中外製薬上席執行役員・岡部尚文氏インタビュー

―創薬研究において力を注ぐテーマは。

「革新的な薬を作ろうと思うと、技術を脇に置いて考えることはできない。薬の標的分子は、扱ったことのないものや、扱いが難しかったものが多く出てくる。それを医薬品に結び付けるには、これまでになかった技術が必要。コアになるものは自分で構築したい。買った技術は使いこなすのが大変だし、進化させるのも難しい。低分子医薬品と抗体医薬品、中分子医薬品は極力、自前でやりたい」

―なぜ、中分子に着目しているのですか。

「標的分子が細胞内にある場合、抗体では基本的に狙えない。低分子は細胞内の標的に作用するが、分子サイズを大きくしていくと扱いが難しくなる。抗体と低分子の中間的なものは何だろう、と考えて行き着いたのが中分子だ。まだ臨床開発に入っていない段階だが、新しいモダリティ(創薬手法)なので、質で妥協したくない。技術の質が悪いと、製品の質に限界が出る」

―製薬業界では新たな創薬手法として、核酸医薬品への注目も高まっています。

「自分で核酸の基盤もつくるのは手に余る。そこまでマルチにモダリティを持つには、もう少し(自社の)サイズが大きくならないと難しい。ただ幸いなことに、うちは(スイス大手製薬)ロシュのグループにいる。ロシュは核酸の基盤も持っているので、相乗効果を発揮できるのではないか」

―若手研究者の育成で重視する点は。

「日本だけにとどまって創薬をすることはもはやない。世界で何が起こっているのかを自分の頭で捉えられないと、自分がどれぐらいのことをやれば世界に通用するのかを実感しにくいと思う。何か一つの得意技があることは重要だが、自分で全部できないときには周りの力を借りることも必要。ロシュとの関係を生かし、人事交流や共同プロジェクトを進めていきたい」
(聞き手=斎藤弘和)

日刊工業新聞2018年8月8日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
08月13日
この記事のファシリテーター

後期臨床試験や海外販売においては多くの部分をロシュに委ね、自社は創薬研究と早期開発に経営資源を集中できることが強み。低分子や抗体では自社創製品を発売するなど結果も出してきた。ただ岡部上席執行役員も話すようにモダリティが多様化し、創薬の難易度は増す一方。今後は研究部門でもロシュとの提携の効果を高めたいところだ。
(日刊工業新聞社・斎藤弘和)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。