6400億円の買収は高値づかみではないですか?「あんなもんだ」

三菱ケミカルHD・小林会長に聞く「5年もかからずに戻せるだろう」

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傘下の大陽日酸の買収について語る三菱ケミカルHD・小林会長
 三菱ケミカルホールディングスは産業ガス事業で過去最大の巨額M&A(合併・買収)に打って出る。傘下の大陽日酸が同業の米プラクスエアの欧州事業の一部を50億ユーロ(6438億円)で買収する。取締役会長の小林喜光氏は大陽日酸の連結子会社化などでコングロマリット経営を推進してきた。一方でM&Aが株価上昇につながらない「コングロマリット・ディスカウント」との批判も絶えない。小林氏に今後の総合化学メーカーのあり方を聞いた。

 ―傘下の大陽日酸が巨額買収を5日に決めました。
 「非常に良い買い物だ。産業ガスのビジネスモデルは各町に1軒はあった昔の豆腐屋と同じだ。豆腐は腐るから地産地消で、ガスはボンベが重くて遠くへ運べない。だからテリトリー(縄張り)を押さえないといけない。今回の買収で南米を除いてグローバル展開できるようになる。産業ガスは産業の基盤だから、どんなITの時代になっても永遠に残る。ものすごく安全なビジネスだ」

 ―高値づかみではないですか。
 「あんなもんだ。現在のM&A市場は相対的にみんな高いのは確かだ。ただ、三菱ケミカルHDとしては安定的に300億―400億円の純利益が新たに入るわけで、財務指標は一時的に少し悪くなるが、5年もかからずに戻せるだろう。今はMMA(メタクリル酸メチル)事業も稼いでいるし、良いタイミングだった」

 ―18年初から株価は下げ基調です。多角化した事業間のシナジーが見えにくく、グループ全体の評価を下げる「コングロマリット・ディスカウント」がその一因と言えます。
 「我々はケミカルや医薬、ヘルスケアのイノベーションのシナジーを主に考えている。今のビジネスを分離させればPER(株価収益率)が上がるなどの欧米流にはくみしない。石油化学だけ、医薬だけと分かりやすく集中してもうけの効率のみを上げる経営はもう古い。コングロマリット・ディスカウントを一定程度受け入れながら、環境や水、資源、人口の一極集中、食糧、高齢化問題を解決するのが企業の本質だ。ならば、事業間のシナジーが発揮できそうな日本流は不自然ではない。社会的な問題を解決する上で複合的な技術が必要だから、今の総合化学メーカーが無駄なことをやっているわけではない。これまで『ポリューション(汚染)・サプライヤー』だった化学は今後『ソリューション・プロバイダー』にならないといけない」

 ―今後のポートフォリオ改革の方向性は。
 「医薬やパフォーマンス・ケミカル(機能化学)、石化を本当にどうするのか。大陽日酸への出資比率が50・59%のままか、もっと増やす方がいいのか。田辺三菱製薬は56・39%のままでいいのか。それらは今後の議論だろう」
(聞き手=鈴木岳志)

日刊工業新聞2018年7月13日

COMMENT

鈴木岳志
編集局第一産業部
編集委員

もともとエネルギー多消費産業だが、最近の海洋プラスチックゴミ問題などで化学メーカーへの風当たりはより厳しい。ただ、諸課題へのソリューション提供には総合化学の製品群ときめ細かさが生かせる。化学が引き起こした問題を解決できるのもまた化学の力であるはずだ。正当な評価は後からついてくる。

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