製薬企業のリストラ相次ぐ…何があった?

「従来のビジネスモデルにぶら下がるだけでは今後が望めない」

 リストラの検討あるいは決定をする製薬企業が相次いでいる。国内では薬価制度抜本改革に伴って4月から新薬評価の枠組みが縮小されたなど、事業環境が厳しさを増していることが背景にある。各社は海外展開強化をはじめとする打開策を模索しているが、そうした動きに対応できる人材は必ずしも多くない。堅調な事業も含めて経営資源の最適化を進め、新たな挑戦に踏み出すための余力をどれだけ蓄えられるか試される。

初の退職募集


 「従来のビジネスモデルにぶら下がるだけでは今後が望めない。会社を中長期的に発展軌道に乗せる観点で、やらなければならない」。大正製薬ホールディングス(HD)の上原明社長は、早期退職優遇制度の実施背景をこう説明する。

 同社が早期退職を募集するのは、創業以来初めて。対象は勤続10年以上かつ40歳以上。募集人数は定めていないものの、対象従業員は約3000人に及ぶ。7月1日から8月10日まで募集し、該当者は9月末から12月末にかけて退職する。

 同社はドリンク剤「リポビタン」の苦戦が続いている。だが、より深刻なのは医療用医薬品事業だ。2019年3月期の同事業売上高予想は前期比14・1%減の825億円。抗生物質「ゾシン」「クラリス」の特許が切れた上、政府は薬剤耐性(AMR)問題に対応する観点で抗菌薬の適正使用を推進している。19年3月期のゾシン売上高は前期比で半減の見通しだ。

 国内の環境が苦しいならば、別の道を探す必要がある。上原健取締役は早期退職募集の意図について「人数を単に減らしたいわけではない。海外(向けの一般薬)事業は伸びている。会社が今後やることに対して適応できる方には残ってほしい」と語る。

中計見直しへ


 「目的のためには全ての可能性を検討する」。第一三共の中山譲治会長兼最高経営責任者(CEO)は、現中期経営計画を見直す過程で人員削減を念頭に置いているのかとの質問にこう回答した。

 同社は19年3月期の営業利益を同2・3%増の780億円と予想。ただ現中計の策定当時は営業利益目標を17年度に1000億円、20年度は1650億円としていた。米国では麻薬性鎮痛剤の乱用が社会問題化したことなどに伴い、疼痛事業が停滞。日本市場も薬価制度抜本改革で不透明感が強まった。こうした状況を踏まえ、新たな計数目標を遅くとも18年4―9月期決算発表の時期までに公表する方針を掲げた。

 事業構成自体が変わるシナリオも否定できない。第一三共は日本では新薬、後発薬、ワクチン、一般薬を展開してきた。だが中山会長兼CEOは「このフォーメーションがどの程度有力か、もう一度検証したい」と話す。17年度は後発薬事業の売上高が前年度比2・3倍の467億円、一般薬事業が同9・3%増の729億円だった。好調な事業も含めて点検する姿勢に危機感が垣間見える。

研究拠点集約


 主要製薬企業の中で上位の売上高営業利益率を誇るアステラス製薬も経営資源見直しに余念がない。6月末までにオランダにおける研究開発機能を日本と米国へ集約し、300人超を削減する。

 オランダには旧山之内製薬の泌尿器系に強い人材が集まっていた。だがパイプライン(開発品一覧)が変化してきている点を考慮。「医薬品開発受託機関(CRO)のコントロールも日米欧3極で行う必要がない」(安川健司社長)と判断し、より一層の効率化を追求することとした。
(文=斎藤弘和)

日刊工業新聞2018年5月22日

日刊工業新聞 記者

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05月22日
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各社は掲げた施策をやり切るだけでなく、効果の検証も求められる。その間にも事業環境は変化しうる。絶え間ない状況判断が必要になる。
(日刊工業新聞社・斎藤弘和)

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