薬剤費削減の逆風、製薬業界はどう突破するか

体制刷新の製薬協が試練の船出

 体制を刷新したばかりの日本製薬工業協会(製薬協)が試練の船出に挑む。5月24日付で就任した中山譲治会長(第一三共会長兼最高経営責任者)は、これまで以上に多くの利害関係者に対して製薬産業の社会的な価値を訴えていく考えを示した。薬価制度抜本改革に伴って4月から新薬評価の枠組みが縮小されるなど薬剤費抑制の流れが続いており、幅広い議論を促すことで苦境を打破する狙いがある。少しずつでも共感を積み重ねていけるかが試される。

 「生命関連産業としての社会的な意義や貢献について、今まで以上に幅広いステークホルダー(利害関係者)の理解向上を図ることが極めて大事だ」。製薬協が5月31日に開いた記者会見で、中山会長はこう強調した。背景には、革新的な医薬品のもたらす価値が正しく評価されていないとの不満がある。

 例えば、日本では社会保障関係予算の伸びを抑制するにあたって「財源の大半は薬価引き下げから捻出されている」(中山会長)。2018年度は社会保障費の自然増が当初6300億円に上ると見込まれていたものの、結果的には約5000億円に抑えられた。これが実現したのは、薬価制度改革を含めて1766億円の薬剤費削減がなされたことが大きい。中山会長は「著しくバランスを欠いた予算だった」と憤る。

 薬価制度改革に伴い、18年度からは後発薬がない新薬の価格を実質的に維持する枠組みである新薬創出加算の対象も縮小された。中山会長は「新薬創出加算の品目要件の見直しと企業要件の撤廃は最も重要だ」と述べ、あるべき制度を提案する考えを示した。

 ただ、中山会長の主張は従来製薬協が訴えてきた内容と大きな違いはなく、政府を動かせるかは未知数だ。16年度診療報酬改定では医師や薬剤師などの技術料に当たる本体部分はプラス改定となった一方、薬価はマイナス改定だったなど、薬価が狙い撃ちにされることは過去にもあった。

 こうした構造問題について中山会長は「最終的には国民が選択するものだ。新薬が減れば社会保障費は減るが、その分、(病から)救われる人も減っていく」と指摘。「今まで我々は(医療政策を)良く分かっている方々へ意見を言ってきた」状況を改め、情報発信の対象を広げることで製薬産業への理解を促すとした。

 製薬業界が自ら医療の合理化につながる努力をすることも欠かせない。例えば患者の服薬をめぐっては、処方された薬の飲み残しが発生してしまう、いわゆる残薬の問題が指摘され続けてきた。多くの薬を服用することで副作用などの有害事象を引き起こすポリファーマシーも減らす必要がある。製薬協の伍藤忠春理事長は、「適正使用は大変重要な課題。啓発活動のあり方も見直していく時期だ」と気を引き締める。

日刊工業新聞2018年6月5日

日刊工業新聞 記者

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06月05日
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新薬メーカーは研究開発を効率化する余地もあるとみられる。特に第3相臨床試験は多額の費用がかかりがちだ。さまざまな制約がある中でも革新的な新薬を出し続け、幅広い層の共感を得られるかがあらためて問われている。
(日刊工業新聞社・斎藤弘和)

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