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【原丈人】天寿を全うする直前まで健康、日本はその世界最初の国となる

内閣府参与が語る公益資本主義の行方
 これまでグローバルスタンダードとされてきた英米型資本主義は今、格差を拡大し行き詰まっている。この状態を打破する手段として私は、「公益資本主義」を提唱している。

 公益資本主義とは社員、取引先、顧客、地域社会、株主などの企業活動に関わるメンバーに、適正な分配を中長期的に継続できる経営哲学を指す。公益資本主義に基づいた適正分配は、貧富の格差をなくし、中間層の拡大を可能にする。今こそ、相対的に安定した雇用と厚い中間所得層を維持する日本から公益資本主義を発信し、世界のモデルとなるべき時だと確信している。

 公益資本主義の実践の一つとして、具体的な計画について説明したい。それは、「天寿を全うする直前まで健康であることを実現できる世界最初の国となる」というものだ。実現が困難だと思われがちだが、公益資本主義の国であれば実現可能だと考えている。

 老衰で亡くなる人は幸せである。子どもや孫たちも、まさか1カ月後に最期が来るとは思えないくらい元気に日常生活を過ごすのが理想だ。本人が元気であれば、長期間の介護も必要ない。年老いても体や頭が健康であれば、働くことも遊ぶこともできるが、これを実現するには三つの要素が必要になる。「テクノロジー・イノベーション」「制度イノベーション」そして「エコシステム」である。

 テクノロジー・イノベーションは、老衰の状態で最期を迎えられるようになるのは理想ながら、不慮の事故や難病などで健康な生活を奪われる可能性がある。そこで不慮の事故にあっても、難病にかかっても健康を回復し、再び健康な生活を取り戻すことのできる“技術開発”が必要となる。

 制度イノベーションは、技術イノベーション以上に重要である。現在は、世界の多くの国が米国食品医薬品局の定める新薬許認可の制度にならっている。この制度で認可を得るには、10年以上かかるといわれており、数年の余命宣告を受けた患者は、薬を手にすることなく最期を迎えてしまう。そのため、条件付きでも安全性が確立された場合には、1日でも早く患者に届くようにするのが望ましい。こうした制度改革が必要となる。

 三つ目のエコシステムは、テクノロジー・イノベーションと制度イノベーションを持続させるために不可欠な仕組みであり、その重要点は人材育成である。

 次回以降、この3点について詳細を述べていきたい。
【略歴】
原丈人(はら・じょうじ)27歳まで中米の考古学研究に従事。84年デフタパートナーズを創業し、アクセルパートナーズの立ち上げに参加。米・英・イスラエルで多数の通信情報技術や生命科学ベンチャーに出資、世界的企業に育てた。国連政府間機関特命全権大使、財務省参与などを経て現在、アライアンス・フォーラム米国公益財団代表理事。
原丈人氏

 ※「有題無題」は毎週月曜日、5名の識者による持ち回りでさまざまなテーマで掲載中です。
日刊工業新聞2018年7月23日 「有題無題」
山口豪志
山口豪志 Yamaguchi Goushi Protostar Hong Kong 董事長
 今、日本国での一番の支出は、医療費と高齢者福祉費である。それが労働者層にヒットしている一番大きな財政負担になっている。それを解決するためには、医療制度改革という言葉で、支出の付け替えをやっても意味がない。そこには、技術革新による根本的な解決策が必要になる。IPS細胞治療もその一手であるし、サイバーダイン社のロボット活用もそうだ。技術的な支援と、その技術を普及させるための法整備も必須であろう。  原さんの唱える、公益資本主義の輪郭には、やはり、ライフインフラの衣食住医が大変重要なテーマである。ここ日本から、世界に新しい衣食住医の、人類に貢献する圧倒的な仕組みを叶えて、人類に貢献できれば、日本人として、とても誇りに思えることだろう。できることから、小さくともはじめていきたいと強く思う。

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