シリコンバレーで存在感ゼロの三菱ケミカル、“脱丸の内マインド”でVB探す

 三菱ケミカルホールディングス(HD)はベンチャー企業との連携強化に向けて新たな段階へ突入した。米国のインキュベーターなどとスポンサー契約を相次ぎ結ぶほか、2018年度中に米国に拠点を設立する。シリコンバレーなどでの存在感は希薄で、まさにゼロからのスタートだ。18年度に数百社のベンチャーを調査して、そのうち約10社との提携を目指す。そして、究極の目標は“脱丸の内マインドセット”だ。

 「シリコンバレーで三菱ケミカルHDの存在感はゼロだ」。ベンチャー連携を指揮する三菱ケミカルHDのラリー・マイクスナー執行役常務はそう言い切る。ただ、「悪い評判もなく良い評判もないから、何もない現状から良い評判をつくれる」と前向きに捉える。

 シリコンバレーはオープンイノベーションの“聖地”のようなイメージだが、その実は閉鎖的な一面を持つ。ネットワークの輪は意外に小さく、顔見知りで成り立つ。よそ者は相手にされず、評判は一瞬で広まる村社会のようだ。「丸の内からの出張ベースでは表面だけだ」とマイクスナー常務は断言する。

 だから、同社は米国にベンチャーなどとの連携の窓口となる拠点を18年度に設置する計画。西海岸や東海岸などに複数の拠点を構える方向で検討している。ただ、ベンチャー探索は「餅は餅屋」に頼る方が効率的だ。

 3月末にクリーンテクノロジー分野で米国最大のインキュベーターのグリーンタウン・ラボ(マサチューセッツ州)とスポンサー契約を結んだ。約40社のスタートアップ企業と同30社の大企業がパートナーだが、それ以上の幅広いエコシステムを強みとする。面白いスタートアップ企業の紹介にとどまらず、「大企業同士でも面白いパートナーシップをつくれるほか、当社の経営幹部を連れて行くと良い経験になるはず」とマイクスナー常務は期待する。5月にはデジタルガレージが立ち上げたバイオ・ヘルスケア分野のスタートアップ育成支援プログラムにも参画した。

 17年4月に入社したマイクスナー常務は最初の1年間をオープンイノベーションの土台づくりに費やした。「生き続ける枠組みをつくって、人材も集めた」と及第点をつける。率いる先端技術・事業開発室内にベンチャーグループなど4グループを発足させた。そして18年度はそれぞれ準備段階から実行段階に移る。

 オープンイノベーション推進とともに、大企業特有の“重厚長大”な社風を変革する起爆剤としてベンチャー連携を利用する。マイクスナー常務は「丸の内の本社の人たちがベンチャーのアグレッシブな仕事のやり方を見れば、自らの考え方を変えるはず」と信じる。

日刊工業新聞2018年6月15日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
06月17日
この記事のファシリテーター

革新の風を社内に取り込む壮大な挑戦だ。
(日刊工業新聞第ニ産業部・鈴木岳志)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

PRmore

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。