中小企業がアスリートを社員として雇用したワケ

矢口製作所、アルペンスキー 五輪出場へ応援 会社の目標重ね


 矢口製作所(埼玉県所沢市、川名一嘉社長)に、4年後の北京冬季五輪を目指すアルペンスキー選手が入社した。社員50人規模の町工場が競技活動優先の選手を正社員で採用するのは珍しい。川名社長は「日本でアルペンスキーはマイナー競技。当社のような中小規模の企業と境遇が重なった」とその動機を明かす。

 日本オリンピック委員会の就職支援制度「アスナビ」を介し、早大スキー部から松本達希選手を採用。回転など技術系種目で国内5―6番手だ。会社では14時までの短縮勤務。早ければ8月に海外遠征へたち、そのまま競技参戦というスケジュール。「1年の半分以上は会社にいないが、遠征費などを工面してあげたい」(川名社長)と全面支援する。

 同時期に会社も経営革新計画を策定、4年後の目標を明示した。最終年度が北京五輪と重なる。「松本君は五輪を目指す。君たちは何を目指すのか、社員一人ひとりに目標を持ってもらいたい」(同)と、相乗効果を期待する。

 松本選手も「日本のアルペン界は長くメダルを取れていない。だからこそ自分がという思いが強い」とメダル獲得で会社への恩返しを誓う。

ナツバタ製作所、フットサル 練習打ち込める職場提供


 ナツバタ製作所(長野県須坂市、小林豊社長)は、4年ぶりに2人を中途採用した。ともに日本フットサルリーグ(Fリーグ)2部で地元のフットサルチーム「ボアルース長野」に所属する選手。昨年、同チームのスポンサーに名を連ねた縁から採用となった。小林社長は「夢を諦めず、スポーツも仕事もやり切ってもらいたい」とエールを送る。
左から小林社長、城野選手、山本選手

 神戸のチームから移籍した城野全輝(まさき)選手(22)と、仙台から移籍した山本佳輝(よしき)選手(21)。日中は働いて21時から練習し、週末の試合に臨む。選手を支援してもらえないかとチームに求められ、二つ返事で応えた。精密部品の加工を主力に社長を含め5人だった同社。人材確保に苦戦していただけに「渡りに船の話だった」。

 2人にとって機械の扱いは初めて。それでも「安定した生活のもとでフットサルに打ち込めるのはありがたい」(城野選手)。「仕事で学ぶことは多いが、それも楽しみ」(山本選手)という。「アスリートとしてできるところまで頑張り、引退後も望むならここで仕事を続ければいい」と語る小林社長。夢を共有し、社のモチベーションも上がった。7月に始まるリーグ戦には全社挙げて応援に行こうと盛り上がっている。

日刊工業新聞2018年5月30日

平川 透

平川 透
05月31日
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アスリートの活動や知見が自社の製品開発・ブランディングに貢献すると双方に相乗効果があるように思います。

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