祝・代表決定!カー娘「LS北見」活躍の裏に情報科学あり

北見工大が産学官連携で支援

 2018年2月、韓国で冬季五輪・平昌大会が開催された。カーリング競技で銅メダルを獲得した日本女子代表チーム「ロコ・ソラーレ北見(LS北見)」の活躍を機に、カーリングへの注目は一気に高まった感がある。北海道北見市は「カーリングの街」と呼ばれる常呂町を擁し、LS北見の本拠地ともなっている。北見市にある北見工業大学では、カーリングをはじめとする冬季スポーツを工学的視点から支援する研究に取り組んでいる。

工学的視点から活躍支援


 北海道北東部に位置する北見工業大学(以下、本学)は、その立地環境から寒冷地・環境・エネルギー・第一次産業に関連する研究に重点を置いている。また研究面にとどまらず、前述の重点研究の分野においては教育や地域貢献の面でも産学官連携活動を推し進めている。それら本学の重点研究分野の一つに「冬季スポーツ」がある。

 本学は16年4月に「冬季スポーツ科学研究推進センター」(以下、当センター)を設置した。地域と密着し工学的視点から冬季スポーツの研究に取り組む、世界的に前例のない研究組織である。当センターでは「アルペンスキー競技」と「カーリング競技」を取り上げ、アスリートの競技力向上による国際的活躍の支援を目指している。また、積雪寒冷地における生涯スポーツの定着・発展による地域社会の活性化とQOL(生活の質)の向上を目指し、用具開発やスキル解析などの研究を行っている。

 カーリングに関しては、戦術を情報科学によって支援する研究を進めている。戦術ノウハウを客観的に検証する「デジタルスコアブックiCE」を開発した。iCEはタブレット端末で稼働するアプリケーションであり、ストーン配置やショットの種類と軌跡、ショットの正確性などの情報を記録し、チームや個人のショット率、試合展開などをグラフや図で逐次可視化し表示する。現在、iCEには約9万ショットのデータが蓄積されており、試合の記録やチームミーティングで利用されている。さらにはテレビ放送でも、記録した試合情報が実況中継データとして利用されている。

 また、カーリングではブラシでストーン直前の氷表面を擦り、ストーンの運動を制御するスイーピング技術が試合の勝敗を大きく左右する。そのブラシの運動状態や応力状態をリアルタイムでモニターする装置を開発した。バイオメカニクスによる動作分析を行い、選手の効率的・効果的な競技スキル向上を支援している。

 アルペンスキーに関しては、本学が有する研究設備としては国内唯一となる「SkyTech Sport Ski & Snowboard Simulator」を利用し、スキー用具や動作に関する研究開発を進めている。日本人の骨格的特徴に適合したブーツ開発がレクザム(大阪市)との共同研究により進められ、10年に製品化へと至った。10年バンクーバー冬季五輪、14年ソチ冬季五輪では、モーグル日本代表として出場した上村愛子選手がこのスキーブーツを着用して試合に臨み、大活躍した。

 16年には「ステルステック」という新たなスキーブーツ用パーツが誕生した。ハウスメーカーのブレイン(北海道千歳市)との共同研究により、5年の歳月をかけて開発した。「ステルステック」は3センチメートル四方の薄いチップ状部材の片面に、わずかにカーブを設けたパーツである。このパーツをスキーブーツ内のフットベッドに装着することにより、アルペンスキー選手がターンする際の体を傾ける速度を上げ、滑降タイムを短縮することが可能となった。現在、スキー愛好家からプロ選手までの多くが同開発品を愛用している。

イノベーションを創出


 今回取り上げた北見工業大学の「冬季スポーツ」への取り組みは、本学を取り巻く「寒冷地」という地域の特徴を強く反映した産学連携の例となっている。国は地方創生・地域活性化に向けた地域イノベーション創出へとつながるさまざまな施策を進めている。また、本学は文部科学省が16年度に提示した国立大学法人の機能強化に向けた支援の枠組みにおいて、「地域に貢献する取組」を選択した。その地域が持つ特徴を生かした取り組みには、ローカルな価値からグローバルな価値へとつながる「地域イノベーション創出」が期待できる。

 本学は北見市を中心とするこの地域の魅力向上と、この地にある大学としてのさらなる地域貢献を目指した取り組みを進めていきたいと考えている。
カーリングインフォマティクスの展開

(文=北見工業大学社会連携推進センター准教授・内島典子)

日刊工業新聞2018年5月16日

武田 則秋

武田 則秋
05月22日
この記事のファシリテーター

19日行われたカーリングのパシフィック・アジア選手権代表決定戦で、女子はLS北見が代表の座を勝ち取った。本大会での活躍が期待される。ただ、こうした強さの背景に、北見工業大学の「冬季スポーツ科学研究推進センター」の支援があることはあまり知られていない。トップ選手の技能向上や幅広い層への普及促進など、スポーツにテクノロジーが融合する効果は大きい。ただ北見工業大学は「寒冷地」という地域性も取り込んでいる。LS北見の吉田知那美選手は平昌五輪後の会見で「今はこの町にいなかったら夢はかなわなかったなと思う」とコメントしたが、同推進センターの取り組みも、北見だからこそできるものだろう。

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