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AIを使って設備トラブルの予兆

 人工知能(AI)を利用するさまざまなシステムの開発が本格化している。例えば、翻訳システムである。パソコンのグーグル翻訳を使えば、日本語で「アポイントをお願いします」と入力し、翻訳として英語を選ぶと“Please give me an appointment.”が得られる。さらに、画面にあるスピーカーのボタンを使えば、発音を聞くこともできる。いずれも無料で利用できる。A4判1ページ程度の英文であれば、ほぼ瞬間的に日本語に翻訳してくれる。

 この無料の翻訳システムはスマホでも使える。アプリからグーグル翻訳を選択する。パソコンより会話を主体にしたシステムである。筆者の下手な英語で「ほわっちゃがんなどぅー」としゃべっても、正確に“What are you going to do?”と確認の英文が表示され、「何をするつもりですか?」と訳が表示される。

 AIを活用した産業におけるシステム開発が盛んである。それらの中で、筆者の目につくのは、工場の保守管理システムである。電柱・電線、エレベーター、飛行ロボット(ドローン)やサーボモーターなどの故障検知システムである。故障や事故の発生を予知するシステムである。

 化学工場では、設備の不備や運転ミスにより大規模な事故が度々発生している。設備の不備の予知はAIによる予知が可能である。

 三菱ケミカルは長年蓄積したプラントの運転データ基にAIを使って設備トラブルの予兆を検知するという。運転データは、プラント各所における化学物質の流量、温度、圧力などが経時データである。正常運転時にはこれらの数値データがほぼ一定であるが、不具合があると経時データが変動する。過去の故障・事故発生時のデータをAIに学習させることで、逆に経時データと故障・事故の関係性を見いだせる。したがって、この関係性から故障・事故の予兆を知ることが可能になるのである。

 三菱ふそうトラック・バスはAI技術を導入し、生産設備の稼働状況を解析して機器の予防保全につなげる。住友電気工業はAIが自ら学習し、従来の検査では判別が難しい亀裂の特徴を抽出し、不良品を判別する。

 AIの「学習」能力を活用すれば、異常時に至る運転データから故障・事故と運転データの関係性を決定できるので、故障・事故の予防が可能となる。
(文・日本開発工学会会長(東京理科大学元教授)大江修造)
日刊工業新聞2018年4月23日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
データは蓄積され続けるでしょうし、色々なものがより安全・効率的になっていくでしょうか。

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