食品業界でロボット導入が進まないワケは?
アストリスト・橋田浩一社長インタビュー
水を使う仕事や長時間の立ち作業など人手の作業では苦労が多い食品工場。人手不足も深刻で省力化需要が叫ばれているにもかかわらず、なかなかロボットが普及しない。その背景や、ロボットを採用するにはどういった策があるか、食品向けのロボシステム開発に強いアルトリスト(東京都調布市)の橋田浩一社長に聞いた。
―自動車や電機などの一般製造業に比べ、食品業界にはロボットが浸透していません。
「要因はさまざまだ。第一に食品が持つ特殊性。定形部品が大量に流れる一般製造業と違い、食品はプリンや生卵、果物、ケーキのように扱いがデリケートなものや水分を多く含むものが主流だ。吸着ハンドなどに独特の機構が必要になる」
―ハンド機構を独自開発すれば、コストアップになります。
「コストアップ要因は他にもある。製造工程で油の飛沫(ひまつ)が飛んだり水蒸気がたちこめたりしている作業環境が多い。防水仕様や高温対策が必要になる。衛生面でも洗剤を残さない対策が必要だ。油や水蒸気が飛ぶ環境では、画像カメラの精度を保つために定期洗浄や、専用対策をする必要もある」
―コンビニエンスストアの弁当などでは商品仕様が短期間で変わるため、対応の難しさも指摘されています。
「パートの主婦などでは『明日から漬けものをニンジンからキャベツに変更します』の一言で対応できるが、ロボットだとそうはいかない。動きを教えるティーチングのやり直しが必要になる。さらに、唐揚げや天ぷらなど1品ごとに大きさや形が違うものばかり。画像認識や処理などの技術を工夫しても、相応のコストがかかる」
―コンビニ弁当や総菜などは『始めに値段ありき』の商品が多いため、コストアップは難しいです。
「短期間での仕様やサイズ変更、コストアップができない実情を考えると、ロボットシステムの設計思想を変える必要がある。この商品ならこれ、とガチガチなシステムではなく、柔軟性を持たせることが大切だ。ガチガチのシステムだと臨機応変の事態に対応できない。食品業界からは、展示会でデモを見たときは素晴らしいと思ったのに現場では使い物にならないとの不満がかなり多い」
―アルトリストはどう対応しましたか。
「商品変化を考え吸着ハンドを使わず、商品をフックにかけて持ち上げる方法にした。梱包(こんぽう)も段ボールに商品をいれるのではなく、商品の上から段ボールをかぶせるようにした。瓶の高さや本数が変わっても容易に対応できる」
(聞き手=嶋田歩)
―自動車や電機などの一般製造業に比べ、食品業界にはロボットが浸透していません。
「要因はさまざまだ。第一に食品が持つ特殊性。定形部品が大量に流れる一般製造業と違い、食品はプリンや生卵、果物、ケーキのように扱いがデリケートなものや水分を多く含むものが主流だ。吸着ハンドなどに独特の機構が必要になる」
―ハンド機構を独自開発すれば、コストアップになります。
「コストアップ要因は他にもある。製造工程で油の飛沫(ひまつ)が飛んだり水蒸気がたちこめたりしている作業環境が多い。防水仕様や高温対策が必要になる。衛生面でも洗剤を残さない対策が必要だ。油や水蒸気が飛ぶ環境では、画像カメラの精度を保つために定期洗浄や、専用対策をする必要もある」
―コンビニエンスストアの弁当などでは商品仕様が短期間で変わるため、対応の難しさも指摘されています。
「パートの主婦などでは『明日から漬けものをニンジンからキャベツに変更します』の一言で対応できるが、ロボットだとそうはいかない。動きを教えるティーチングのやり直しが必要になる。さらに、唐揚げや天ぷらなど1品ごとに大きさや形が違うものばかり。画像認識や処理などの技術を工夫しても、相応のコストがかかる」
―コンビニ弁当や総菜などは『始めに値段ありき』の商品が多いため、コストアップは難しいです。
「短期間での仕様やサイズ変更、コストアップができない実情を考えると、ロボットシステムの設計思想を変える必要がある。この商品ならこれ、とガチガチなシステムではなく、柔軟性を持たせることが大切だ。ガチガチのシステムだと臨機応変の事態に対応できない。食品業界からは、展示会でデモを見たときは素晴らしいと思ったのに現場では使い物にならないとの不満がかなり多い」
―アルトリストはどう対応しましたか。
「商品変化を考え吸着ハンドを使わず、商品をフックにかけて持ち上げる方法にした。梱包(こんぽう)も段ボールに商品をいれるのではなく、商品の上から段ボールをかぶせるようにした。瓶の高さや本数が変わっても容易に対応できる」
(聞き手=嶋田歩)
日刊工業新聞2018年4月18日