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東証1部、通期業績の上方修正300社超え

円安持続、資源価格の回復などが後押し
東証1部、通期業績の上方修正300社超え

業績を追い風に日経平均株価の上昇が続く(東証アローズ)

 東京証券取引所に上場する企業の2017年4―9月期決算の発表が終盤戦に入っている。既に東証1部企業の約70%が決算発表を終え、18年3月期の見通しを上方修正する企業が300社を超えそうだ。電機や機械など輸出系業種や、市況が反転したエネルギー系業種の業績回復が鮮明。為替も引き続き、企業の想定レートに比べ円安水準が続く見通しから好業績を後押ししそうだ。

 SMBC日興証券が東証1部の集計対象1443社のうち、71・3%に当たる932社(金融除く、集計は8日まで)の開示結果をまとめた。

 調査によると、企業の18年3月期予想は売上高が前期比6・1%増の382兆6510億円、経常利益は同12・1%増の35兆2320億円、当期利益も同8・7%増の23兆4550億円を見込む。

 増益の背景は主に二つ。まずは外部環境の改善。例えば資源価格の回復を受けてエネルギーや鉄鋼、商社の回復が鮮明となるほか、コンテナ船の市況が改善してきた海運は黒字転換を見込む。

 世界経済の回復も追い風になりそうだ。建設機械ではコマツに代表されるように、世界での建機需要が好調に推移、電機では選択と集中による構造改革も一定の効果を生んでいる。

 個別企業では好業績を受け、18年3月期の予測を上方修正する動きが相次ぐ。営業利益予想で「20年ぶりの過去最高になる」(最高財務責任者の吉田憲一郎氏)と見込むソニーを筆頭に、既に287社が増額修正を公表、下方修正した86社の3倍を超えてきた。

 決算の未集計の企業がまだ約3割あることから、上方修正の企業数は300社超がほぼ確実となりそう。

産業指標、軒並み堅調


 株価がバブル崩壊後の高値水準に上昇する中、産業界の経済指標が堅調だ。製造業の景況感は上昇傾向で、実際の受注額や生産額で過去最高の分野も少なくなく、当面はこの状態が続きそうだ。

産業用ロボット、8000億円突破が確実


 中国など世界で工場の自動化や省人化に伴う産業用ロボットの需要が拡大している。日本ロボット工業会によると17年7―9月期の総出荷台数(会員企業ベース)は、前年同期比49%増の5万6258台と、17四半期連続で増加した。

同工業会は17年の生産額(会員、非会員企業の合計値)が年初見通しの7500億円(前年比7%増)を上回り、過去最高となる8000億円を超えるのは確実とする分析を10月にまとめた。

17年度の受注について、ロボットメーカー幹部は前年度比20%以上伸び「高原状態が続いている」とし、自動車や半導体関連産業向けロボットを中心に「当初の想定を上回る早いペースで成長している」との見方を示す。

新車販売、中国で快走


 中国市場で日本の自動車メーカーが快走している。10月までの新車販売台数はホンダが10カ月連続、トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、三菱自動車が9カ月連続で前年同月比増加。17年4―9月期連結決算では、トヨタ自動車とホンダ、マツダが販売台数で過去最高を更新した。

 ホンダは主力セダン「シビック」やスポーツ多目的車(SUV)「アヴァンシア」が好調で前年同期比18・9%増の72万9000台を確保。中国の通期販売計画を従来公表比4万台増の139万台に上積みした。足元の生産が追いつかず、特別シフトで対応している。

 倉石誠司副社長は「下期も好調が続くが、大幅には伸ばせない」という。マツダも「マツダ3アクセラ」などが好調で、通期販売計画を従来公表比1万台増の29万2000台に上方修正した。

電子部品、スマホ・EV向け最高水準


 スマートフォンや自動車、産業機器など全市場の需要拡大で電子部品各社が好調。上位企業の直近の受注額は過去最高水準にある。日本電産やアルプス電気など主要企業は17年4―9月期連結決算で増収、営業増益。村田製作所やTDKなど大手7社が18年3月期連結決算業績予想を上方修正した。

 スマホの4割以上が日系の電子部品を搭載しており、増山津二太陽誘電経営企画本部長は「特に高性能の積層セラミックコンデンサー(MLCC)など超高級(スーパーハイエンド)製品の需要が拡大している」とする。

 電気自動車(EV)向けも電子部品の搭載数は増加する見込みで、澤村諭ローム社長は「(EV向けでは)ボディー系やパワートレイン系でも大きく伸びていく」としている。

工作機械、受注10カ月連続増


 日本工作機械工業会(日工会)によると9月の工作機械受注実績(確報値)は、前年同月比45・0%増の1490億8800万円で過去最高。10カ月連続で増加した。内需は27カ月ぶりに600億円を超え、外需は3カ月ぶりの850億円を超えた。

 4―9月は前年同期比33・2%増の8228億3500万円で、半期の過去最高を更新した。中国のスマートフォン(スマホ)向けの大口受注は前月から縮小したが、国内外の幅広い産業分野で設備投資が活発だった。

 内需は車向けが大幅に増加。完成車は08年のリーマン・ショック後初めて80億円を上回った。外需はスマホ向けの減少を中国の他の産業や欧州、米国が補った。

百貨店、免税売上高が最高


 日本百貨店協会がまとめた百貨店の9月の免税売上高は232億円で、訪日外国人の増加を追い風に7月に記録した過去最高額を更新した。前年同月比では86・4%増で10カ月連続の前年同月超え。

 10月も速報ベースで、大丸松坂屋百貨店と阪急阪神百貨店では同2倍となるなど、引き続き大きく伸びている。円安の進行に加え、主に関西では格安航空会社(LCC)の増便も後押ししている。

 14年秋―15年ごろのハイエンドブランドなどの高級品を求めるバイヤーらの“爆買い”とは異なり、現在は個人客が増え、人気も化粧品などに移った。円高や中国の関税引き上げ施策で16年夏に客単価は5万円台に落ち込んだが、17年9月には7万円に回復した。

東京・銀座の地価、バブル超え


 国土交通省による17年の都道府県地価調査(基準地価)では最高価格をつけた東京都中央区銀座2丁目の「明治屋銀座ビル」の地価が1平方メートル当たり3890万円と90―91年のバブル期を超え、75年の調査開始以来最高。不動産市場は世界的な金融緩和を背景に資金流入が続いている。

 不動産価格の過熱感を指摘する声もあるが、不動産キャップレート(期待利回り)と10年国債利回りの金利差は一定程度開いており、一部の例外を除けばバブル期のように理論的な説明がつかない水準までは高騰していないとの見方が支配的だ。

 投資対象にも広がりが出ており、地方中枢都市への投資が増加。対象物件も多様化し、ホテルや物流施設への投資が活発化している。
日刊工業新聞2017年11月10日の記事から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
400兆円の企業内部留保に焦点があっているが、未来の成長に向けて大きな課題は人手不足とグローバルでの「雇い負け」、それと経営者のオーナーシップをどう醸成させていくかだろう。

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