AIスピーカーがもたらす変化とは?大阪大学特別教授・石黒浩氏に聞く

「“共生”本命は対話ロボ」

 人工知能(AI)を搭載したAIスピーカーが日本に上陸した。ここ数年日本ではコミュニケーションロボットが相次ぎ登場したが、実証実験や試験導入にとどまる例が少なくない。ロボットに比べ機能をそぎ落としたAIスピーカーはどんな変化をもたらすのか。コミュニケーションロボットを研究する大阪大学の石黒浩特別教授に聞いた。

―AIスピーカーへの受け止めは。

「AIスピーカーは対話ができず、『音声入力スイッチ』や『音声入力検索器』といったところだ。音楽再生や天気確認以外の用途が広がらないと厳しいだろう。人間のパートナーになるには対話が必要になる。コミュニケーションロボットが本命だ。少し前のコミュニケーションロボットは音声認識が弱かった。アマゾンのAIスピーカー『エコー』が売れたおかげでマイクロホンアレイの単価が下がった。マイクロホンアレイは複数のマイクを組み合わせて生活雑音とユーザーの声を聞き分ける。この効果が一番大きい」

―音声認識の精度不足で、接客の入り口で断念したロボットユーザーは多いです。

「エコーのマイクロホンアレイはメーカーが外販しており、簡単に購入できる。マイクロホンアレイはそれぞれ特有の音声ひずみがある。ひずみを含めてディープラーニング(深層学習)で学習させ、音声認識の精度を高めることが第一歩だ。それでもマイクの近くで話せば9割の認識率が、遠くからでは7―8割に落ちる。商品購入など売買を担うにはまだ精度が足りない。(口元のマイクに話しかける)スマートフォンにも劣る」

―ロボット開発者がいまやるべきことは。

「開発者はこの期間に対話の本質を追究することだ。接客マニュアルのような定型対話は飽きられやすい。対話内容の自動生成は条件を限定すれば使える。またユーザーの音声認識の要求精度を下げることも可能だ。人間は雑談中、相手の話を大して聞いていない。それでも対話が破綻しないよう、身ぶり手ぶりや表情などでコミュニケーションして会話を盛り上げる。この要素をどうロボットに取り込むか」

「AIスピーカーでデバイスの価格下落や音声認識の精度向上が進んだ。だがAIスピーカーがゴールではない。この技術や環境変化をうまく取り込んだプレーヤーが次のコミュニケーションロボットの競争で優位に立つだろう」

【記者の目/雑談機能搭載で必需品に】
携帯が通話、スマホが検索やSNSで必需品となったが、コミュニケーションロボットには決め手となるキラーアプリがないとされてきた。ロボットにとって雑談はキラーアプリの候補だ。雑談は情報整理やストレス発散などの複合コミュニケーション。情報整理は知識や価値観の構造化と揺らぎ推定、ストレス発散は感情推定の技術が生きる。どちらも効果を示しやすい。一度AIに依存すると手放せない必需品になり得る。
(文=小寺貴之)

日刊工業新聞2017年10月25日

昆 梓紗

昆 梓紗
10月25日
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ユーザー側もAIスピーカーの登場により「AIがいる生活」に慣れ、その延長線上でコミュニケーションロボットを受け入れるようになるのでしょうか。

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