「伝道師」育成、職場に浸透…三菱UFJ銀行のAI活用法
三菱UFJ銀行は幅広い業務に生成人工知能(AI)を活用し、顧客に提供する価値や生産性の向上を図っている。生成AIを含むAIの真価がより発揮できる環境を整えるためシステム対応するほか、最適な業務フローを見直し、AIが解釈・学習しやすいようにデータも整備していく。単なる業務効率化にとどまらず、業務の至る所でAIが使われている状態を目指す。
三菱UFJ銀行はAzure OpenAIサービスの利用を通じて生成AI「チャットGPT」を社内の安全な環境で使えるようにカスタマイズ(個別対応)し、2023年11月から国内の全社員向けに運用を始めている。生成AIと社内の各種業務システムが応用プログラムインターフェース(API)連携できるようにシステム改修を進めており、24年度中に完了する予定だ。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は24年度から新しい3カ年の中期経営計画に移行した。AI利活用の拡大を中計の大きな柱に位置付けている。三菱UFJ銀行デジタル戦略統括部AI・データ推進Grの谷川綾調査役は社内の生成AI活用の今後の方針について「本中計の3年間はユースケース(活用事例)の深掘りと実現を特に重視して取り組む」と話す。
社内のイベントなどを通じて数多くのユースケースが洗い出された中で、①社内手続きの照会②融資の稟議(りんぎ)書作成③ウェルスマネジメント領域―の大きく三つの領域を優先的に検討を進めている。
銀行内の業務には膨大な手続きがあるため検索の作業さえ大きな負担となっており、生成AIを活用する余地が大きい。また融資実行前の稟議書作成も手間や時間がかかるため、融資担当者が苦労する業務の一つだ。
生成AIの活用拡大に向けては社内教育も重要なポイントとなる。実際の業務フローの中で生成AIをどう使えるかをワークショップ形式で学べる研修を9月にも開催する見通しだ。当初は160人程度の受講を予定し、おのおのの職場で使い方やスキルを周囲に教える「伝道師」としての役割を担ってもらう人材を育成する。
23年11月に生成AIを本格導入してから利用者数は右肩上がりで伸び、4月までの半年で3倍程度になった。会議の議事録作成などさまざまな業務で活用しており、生成AI導入の反響は大きいという。「社内をさらに盛り上げる動きをつくりたい」(谷川調査役)とし、24年度中にイベントを開催する方向で検討している。