3年で7倍以上…3メガバンクが中途採用を活発化する背景事情
3メガバンクが中途採用を活発化させている。2023年度は3行合わせて前年度比2倍となる1100人超を採用。24年度はさらに採用数を上積みし、少なくとも合計1200人を採る計画だ。新たなビジネス機会の創出を目指すIT・デジタル領域や金利上昇で重要性が増す法人向け融資、資産運用などで専門人材を確保する。採用の軸足を新卒から高い専門性を持つ人材に移し、事業環境への対応を急ぐ。(石川雅基)
メガバンクが中途採用の拡大を鮮明にしている。3行は22、23年度に中途採用数を大幅に引き上げた。24年度の採用数は21年度比7倍以上に膨らむ見通しだ。
三菱UFJ銀行は23年度に前年度比2・5倍の約350人を採用。24年度は同1・7倍の約600人まで採用数を引き上げる。23年度に前年度比2倍の約200人を採った三井住友銀行は、24年度も前年度と同水準の人数を採る方針だ。みずほフィナンシャルグループ(FG)、みずほ銀行、みずほ信託銀行のみずほグループ主要3社は合わせて、23年度に同1・7倍の555人を採用。24年度の採用計画は、23年度の計画と同じく計400人以上とした。
りそな銀行も中途採用を拡大する。23年度に同1・9倍の約230人を採った。24年度はさらに採用を増やし、約250人を確保する計画。「(25年度を最終年度とする3カ年の)中期経営計画に沿って採用数を設定している」(同行採用担当者)という。
各行が特に採用に力を入れるのがIT・デジタル人材。サイバーセキュリティーやアプリケーション開発、データエンジニア、デジタル変革(DX)コンサルタントなど幅広い職種を募集する。24年度に全体で50―100人程度の採用を想定する三井住友信託銀行は、IT統括部やデジタル企画部で採用を増やす。「業務の効率化や高度化を図ることが目的」(三井住友信託銀行)とする。
りそなホールディングス(HD)の南昌宏社長は「これからの銀行業務は何をするにもITと表裏一体。デジタルやデータは大きく(銀行の)ビジネスを変える起爆剤になる」と強調する。特に「生成人工知能(AI)の利活用で働き方などに大きくメスが入る」と期待を込める。
三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取も生成AIを念頭に「技術の進歩に伴い、我々のビジネスのあり方そのものが大きく変わりつつある。テクノロジーを活用したお客さまへの提案力の強化や業務推進の効率化が競争力のカギとなる」とみる。三菱UFJ銀行では生成AIを稟議(りんぎ)書やウェルスマネジメント(富裕層向け資産運用)業務における提案資料の作成などに活用したい考え。AIをはじめとする新技術を金融業務や新事業創出に生かす人材の採用も強化する。
一方、大手行の採用担当者は「デジタル人材が取り合いになる中で、(AIをはじめとする)先進技術は(募集をしても)さらに集まりにくい」と話す。社外で経験を積んだ元社員を招き入れる「アルムナイ採用」や、社員が推薦する知人を採る「リファラル採用」など、求職者と多様な方法で接点を持ち、採用につなげることが一層重要になりそうだ。
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