「TSMC工場」稼働で商機掴む、地元企業が上げる期待の声
TSMC効果、集積に拍車へ
台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県菊陽町に建設した第1工場は、2024年内の量産開始を目指す。同社は第1工場開所式に先駆けた6日、県内における第2工場の建設を発表した。九州域内の半導体産業集積に拍車がかかる。「新生シリコンアイランド九州」の実現を目指し、地元企業は期待の声を上げる一方、周辺地域の交通渋滞といった課題も残る。
九州フィナンシャルグループ(FG)の笠原慶久社長は開所を喜ぶ一方、工場周辺の交通渋滞や環境保全といった課題を解決していく必要を指摘する。地元企業については「半導体産業のサプライチェーン(供給網)に入り込めるよう技術を上げたり、設備投資をしたりすることが重要」と語る。金融機関として地元企業の投資の後押しに力を入れていく構えだ。
九州FGの傘下行を含む九州・沖縄の地銀11行は半導体産業振興に向けた連携を1月に発表。協力に乗り出している。
商機をつかむための取り組みも進む。半導体製造装置や半導体の評価を手がけるマイスティア(熊本県益城町、工藤正也社長)は、半導体分野で熊本大学などと共同で技術開発に力を入れる。
工藤社長は熊本県内に拠点を置く企業で構成する、生産連携や共同受注を目指す団体でも活動。「中小企業個社ではなく、共同受注という形で大手企業やサプライヤーからの受注獲得もできるのでは」とみる。2月28、29日にはグランメッセ熊本(熊本県益城町)で展示会「くまもと産業復興エキスポ」が開かれる。同団体も出展し、取引拡大を図る。
オジックテクノロジーズ(熊本市西区)会長で九州めっき工業組合理事長の金森秀一氏は、今後のTSMCと地元メッキ業界との関係について広い視野で捉える。「メッキ単独のつながりではない、産業全体で新しい高度なデバイスへの対応をどのようにしていくかが期待でもあり課題だ」と話す。
熊本では今後、開所した工場の本格稼働だけでなく、第2工場の建設計画が控える。九州経済連合会の倉富純男会長は、第2工場建設の発表を受けた2月7日、「九州におけるさらなる半導体関連産業の集積のみならず、九州ひいては日本の産業発展につながる」など喜びのコメントを出した。さらに「100年に1度といわれるこのチャンスを確実に生かし、九州全域に経済効果を波及させ、『新生シリコンアイランド九州』を実現すべく、産学官金が連携したオール九州の体制で取り組みを進めていく」と今後の活動に意欲を示した。