#12
スパコン「富岳」も搭載…人間の脳のような超並列処理に適した構造「3D-IC」とは?
半導体再興へー大学の最先端研究 #13
受託加工・研究オープン化
「Tohoku CHIPS(トウホク・チップス)」と名付けた東北大学の3次元積層型集積回路(3D―IC)プロジェクトが注目されている。シリコン貫通ビア(TSV)を介して異種デバイスチップを立体的に積む技術開発計画で、近年も新しい接合技術が米電気電子学会(IEEE)発行の専門誌の表紙を飾った。
立ち上げたのは、東北大の福島誉史准教授らの研究チーム。福島准教授はシステムオンチップ(SoC)上で長距離配線が次第に長くなることを懸念し、20年以上にわたり、チップを機能ブロックごとに分けて積層する3D―ICの研究開発をけん引してきた。
福島准教授は「現在、話題の“チップレット”は新しい考え方ではない」とし、複数のチップを1パッケージに実装するチップレットに必要な3D―ICは「人間の脳のような超並列処理に適した構造が利点だ」と話す。省電力、かつ高速に信号を送れることから、国産スーパーコンピューター「富岳」にも採用された。
5月に開かれる半導体パッケージ分野で世界最大の国際学会(ECTC)では、ハイブリッド接合などに関する論文を8件発表予定だ。また東北マイクロテック(仙台市)と300ミリメートルウエハー対応の3D―IC試作ライン「GINTI」を整備。受託加工を手がけるほか技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)などとオープンイノベーションを進める。
2023年から、地元の半導体産業が活況を呈する熊本大学でクロスアポイントメント教授も務める。「トウホク・チップスの3Dシステム集積技術を熊本大の学生にも伝え、先端実装工学から日本の半導体を元気にしたい」と意欲を燃やす。
日刊工業新聞 2024年04月11日
特集・連載情報
日本の半導体が再興の波に乗り、大学への期待感が強まっている。先端デバイスの研究開発は一時期、大学でも下火となった。だが、半導体分野の教育・研究を通じた人材育成や、最先端技術の開発はこれから大学の大きな使命となる。専門家はどのような未来図を描くのか。注目研究者のテクノロジー展望に迫る。