表参道に出店で話題呼んだ雑貨チェーンはなぜ倒産したか、コロナ禍が浮き彫りにした課題
雑貨チェーン店を多店舗展開してきたオーサム(1982年2月設立)が、2023年5月に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。98年にインテリア・生活雑貨などを販売する「off&on(オフノオン)」を出店、大手総合スーパーマーケットの出店拡大とともに、全国各地の駅ビルやショッピングセンターを中心に2014年には直営・フランチャイズチェーン合わせて89店舗まで拡大した。同年の表参道への「AWESOME STORE」の出店を機に、メディアからも注目される存在に。当時、表参道は有名雑貨店が先行して低価格路線で出店し、ライバル店がいる地へあえて飛び込んだ戦略も話題を呼んだ。
コロナ禍で課題が浮き彫りになった。出店攻勢に比して増加した有利子負債の返済、約85%依存する中国への仕入れ代金、店舗・物流センターの家賃などの固定費の三つだ。コロナ禍で営業段階からの赤字となり、有利子負債は約32億3300万円に膨張。商品のほとんどは中国メーカーで製造されており、仕入れ代金として毎月約1億円以上を必要とし、22年1月には高利のノンバンクより約1億円を借り入れる状態に追い込まれていた。
同年3月、現・中小企業活性化協議会に相談し、再建に向けて動き出したが難航した。50社以上のスポンサー候補に話を持ちかけたものの不調に終わった。
最終的に1社スポンサー候補者として残ったが、譲渡対価は実質的にゼロと評価され、不採算店舗は同社に残して清算という厳しい内容だった。私的整理を進めるにはゆとりのある資金繰りが肝になるが、スポンサーが決まらず出口がみえないまま長期化すると、再建は厳しくなる。
アフターコロナにおいても売り上げは伸びず、評価が厳しくなるのは当然だった。水面下で私的整理を進める会社はポストコロナで増加しており、こうした事例の発生はこれからも続くだろう。(帝国データバンク情報統括部)
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