コロナ禍の資金繰り支援が「転換期」…ゼロゼロ融資返済ピークへ企業庁の次の一手は?
コロナ禍で中小企業の事業継続のために続けてきた資金繰り支援が転換期に差し掛かっている。経済産業省・中小企業庁が1月から続けてきた資金繰り支援で新規融資の利用が終了した。中小の資金需要が低下していることから、今後、企業庁は事業再生や経営改善に政策を転換する。2024年4月には2度目の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済ピークを迎える。企業庁の次の一手が注目される。(小林健人、新潟・渋谷拓海)
企業庁は9月、ゼロゼロ融資の返済本格化に合わせ実施してきた「セーフティネット保証4号」の新規融資の利用を終了した。ただ、借り換え目的での利用は12月まで継続。日本政策金融公庫の資本性劣後ローンも限度額を引き上げるといった支援は続ける。
コロナ禍で続けてきた支援を平時に近づけていくことについて、企業庁の担当者は「資金繰りDI(上昇から下降を引いた割合)を見れば、中小の資金需要はないのではないか」と話す。中小企業基盤整備機構がまとめた「中小企業景況調査」によれば、7―9月期は全産業の資金繰りDIはマイナス12・9だった。20年4―6月期にマイナス47・9だったものが、経済の正常化に伴い状況が改善されつつある。
「ゼロゼロ融資で500万円を借りた」という新潟県の飲食店経営者は、新型コロナの収束傾向に伴って業績が回復。現在は資金繰りには困っていないという。また、同県で金型の製造加工などを手がける企業の社長は「ゼロゼロ融資は一切、受けていない。返済の見通しが立たない資金は借りないという方針でやってきた」と説明。「コロナ禍で大変だからと安易な気持ちで大きな額を借りたところも多いかと思うが、それは経営者としての資質を問われているのだと思う」と手厳しい。
ゼロゼロ融資返済が困難な事業者も多くいる。会計検査院が7日公表した22年度決算検査報告によれば、日本政策金融公庫と商工中金が実施したコロナ対策融資のうち、不良債権が約8700億円となった。
日本公庫と商工中金の22年度末までの貸付実績は19兆4365億円で5兆582億円が返済され、残高は14兆3085億円だった。
このうち「正常債権」は13兆5064億円だった。倒産などの危険がある「リスク管理債権」が8785億円、公庫が回収不能の可能性が高いとして償却した「部分直接償却」が1246億円あった。
企業庁の担当者は「業種ごとに返済状況は二極化してきている」とした上で「厳しい事業者への支援は当然やる」と話す。
企業庁は今後、経営改善や事業再生に力を入れる。関係機関が参加する会議を6日に開催。中小の経営改善に関する総合的な対策を23年度中に取りまとめる方針だ。具体的には民間金融機関が経営計画の策定を支援する際の費用を3分の2補助したり、商工中金のデット・エクイティ・スワップ(DES、債務の株式化)を使った再生支援を可能にしたりする。「早めに手を打ち、経営改善や経営者の交代など根本的な対処をしていく」(企業庁担当者)のが狙いだ。
2度目の民間ゼロゼロ融資の返済ピークが24年4月と迫っている。物価高の影響も残る中、経営が厳しい事業者への目配りは欠かせない。