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ピーク時は150店舗弱運営も…飲食業者を破産に追い込んだ赤字体質と足かせ

ピーク時は150店舗弱運営も…飲食業者を破産に追い込んだ赤字体質と足かせ

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OUNHは、新宿や渋谷、池袋のほか、横浜や大阪、福岡などを営業エリアに、居酒屋を中心とした飲食事業を展開していた。リーズナブルな価格設定やネット広告での集客、エンターテインメント要素を盛り込んだ業態開発を行い、客足が鈍化した際には、店舗名や業態を変更して目新しさを打ち出し、集客力を回復させるビジネスモデルを採用。そのため、“象徴的な屋号がない”ことも特徴のひとつだった。国内プライベート・エクイティーファンド(PE)から資本参加を得るなど“成長企業”と目され、TBIホールディングスの商号で運営されていた2017年3月期には売上高約193億400万円を計上し、順調な拡大を続けているかに見えた。

しかし、頻繁な業態転換に伴うコスト増などから不採算店も多く、メニューの統一化などで費用の圧縮に努めたものの、奏功しなかった。ピーク時には150店舗弱を運営していたが、19年3月期には大規模な店舗整理で84店舗にまで縮小。「平日の回転率の低さ」もあって、赤字体質から脱却できなくなっていた。さらに新型コロナウイルス感染拡大が追い打ちをかけ、業績が急激に悪化。22年の秋ごろからスポンサーを付けての任意整理を模索していた。

この際に足かせとなったのが、約5億円にのぼる未払いの公租公課。これを弁済しないまま任意整理を進めることは困難であり、法的整理を前提としたスキームで進めざるを得ない状況だったようだ。こうした中、23年6月にスポンサーとなるファンドが新設した会社へ事業を譲渡し、現商号へ変更。この際、大半の仕入債務は同社によって支払われ、OUNHは金融債務や公租公課などを残して破産となった。「ファンド」から「ファンド」への事業譲渡や、スポンサーによる一般債務の弁済と法的整理を組み合わせた事業再生スキームなどは、経営悪化企業の“出口戦略”の一つのトレンドと言えるだろう。(帝国データバンク情報統括部)


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日刊工業新聞 2023年10月19日

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