携帯電話ショップ運営会社の破綻劇、申立書にあった見逃せない一言
大手携帯電話会社の2次代理店として携帯電話ショップを経営していたアミックテレコムが、8月21日に名古屋地裁より破産手続き開始決定を受けた。一見、順調そうに見えた同社がなぜ破綻に至ったのか。三つのポイントからその理由を紐解(ひもと)いてみたい。
一つ目は業界環境の変化だ。当社が携帯電話ショップを始めた頃は、携帯電話の普及が急速に進み飛ぶように売れた時代だった。しかし普及は一段落し、さらにコロナ禍を経てオンラインで完了する手続きが増えたため利用者がショップに行く機会は減少。携帯電話販売業界は限られたパイを奪い合う厳しいマーケットとなっている。
二つ目は投資の失敗。事業の多角化を図るため美容関係の企業を買収したものの、コロナ禍によって美容室の一時的な閉店を余儀なくされ、わざわざ借り入れをしてまで行ったM&A(合併・買収)が赤字の種になってしまった。また、本店不動産の購入資金なども借り入れで賄っており、身の丈に合う投資だったかは判断が分かれるところだろう。
三つ目は、苦境に立たされた対策として同社が手を染めた不正会計だ。黒字決算となるよう売掛金の過大計上などを行い、見かけを整えることに注力。ただ、ないものをあるように見せかけても、現実の資金繰りが窮するのは必然と言える。
破産申立書上には見逃せない一言があった。代表者の陳述として不正会計について「私が直接関与していないので正確な開始時期は判明していません」と書かれていたことだ。知っていたのに知らなかったと言ったのなら虚偽に当たるし、もし本当に代表者が知らなかったとすれば、これは経営者としての無責任を問われるものだ。経営者保証ガイドラインの見直しなど、再チャレンジがやりやすい環境整備が進んではいるが、不適切会計のような裏切り行為はその後の道をも閉ざしかねない。(帝国データバンク情報統括部)