酒販自由化で崩壊、不適切な会計処理も…酒類卸業者が倒産の顛末
酒販自由化で崩壊、再生かなわず
親会社の原武商店は1921年創業の酒類卸業者。同社の事業モデルに支障が生じたのは2000年代初頭のこと。酒類小売業者について、当初規定されていた距離基準や人口基準が撤廃、酒類販売が自由化されたことによって競争が激化し、地場の酒屋の多くが廃業したのである。これを受け新事業に進出したものの、設備負担が大きく欠損状態が続いていた。これにより、金融機関からの借り入れに加え、金融機関には秘匿し、子会社の鷹正宗から簿外借り入れを行うことで会社経営を維持していた。
子会社の鷹正宗は天保年間創業の焼酎・清酒製造業者。1989年には銘柄に「鷹」を付していたことがきっかけとなり、日本のプロ野球球団「福岡ダイエーホークス」公認の日本酒となったことで、知名度は野球ファンを中心に一般消費者にも浸透していた。そんな同社も新型コロナウイルスの影響により主力商品が不調に陥り、売上高は縮小、親会社への貸し付けを自己資金で賄うことが困難となったため、金融機関からの借り入れを利用せざるを得なくなり、負債は拡大していた。
2022年12月末、原武商店がすべての金融機関に対して鷹正宗からの借入金の存在等の不適切な会計処理の実態を明らかにした結果、金融機関からの支援を打ち切られ、グループ全体が資金繰りに窮することになった。
同年2月末からは福岡県中小企業活性化協議会の支援を受け、スポンサーによる支援を前提とした私的整理によるグループ全体の再生を目指したものの、同年5月19日にスポンサー候補から得られた回答は、グループ全体を再生するには不十分な内容であった。スポンサー候補とはその後も交渉を続けたものの、妥協点を見いだすまでには至らず、グループ全体の共倒れを防ぐために鷹正宗は福岡地裁に民事再生法の適用を申請、原武商店は同地裁に自己破産を申請することになった。 (帝国データバンク情報統括部)