湿気を吸うと髪型が復元する。物材機構など開発したヘアスタイリング材が面白い
物質・材料研究機構の宇都甲一郎独立研究者と荏原充宏グループリーダーらは日本ロレアルと共同で、形状記憶樹脂を利用したヘアスタイリング材料を開発した。湿気を吸うと形状を復元する。従来の整髪料は水分吸収を防ぐことで髪形を保っていた。形状記憶樹脂は積極的に髪形を戻せる。異なる原理を組み合わせると環境に応じてスタイリングの幅を広げられる。
親水性樹脂のポリビニルアルコール(PVA)とセルロース微結晶の複合材で形状記憶機能を実現した。PVAは水分を吸うと形状を復元する性質と軟らかくなる性質をもつ。ただPVAだけでは形状記憶よりも軟化が勝って復元されない。そこでセルロースで水分を受け止めて硬さを調整し、形状記憶機能を発現させた。
実験では複合溶液を髪束に塗ってヘアアイロンで縦巻きにし、重りで一晩引っ張って巻きを崩した後で湿度80%にさらすと、1時間で1割ほど形状が回復した。一般に髪が水分を吸うと膨潤して重くなり髪形が崩れる。
開発材は温水やシャンプーで洗い流せる。セルロースは天然由来のものを用いた。
日刊工業新聞 2023年11月16日