東洋紡・ユニチカ・グンゼ…食品向けプラ包装で加速する環境対応
小売店などの売り場に並ぶ食品に欠かせないのが、包装用のプラスチックフィルムだ。色とりどりのデザインで商品名やブランドイメージを訴求したり、酸素などを通しにくくしてフードロス削減に貢献したりと、活躍の場は広がるばかりだ。一方で海洋プラスチック問題に代表されるように、環境問題に直面しているのも事実。フィルムメーカー各社は、リサイクル材料の使用や製造工程での廃棄プラスチックの削減など、環境に配慮した製品に力を入れている。 (大阪・岩崎左恵)
東洋紡は食品向けの包装フィルムや収縮フィルムを手がけるが、2010年ごろからフィルムの薄肉化やPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルリサイクル樹脂を使ったフィルムを製造するなど、環境への対応を加速している。特にPETボトル向け収縮フィルムのニーズが増加しており、すでに売り上げの約8割を環境対応型製品が占める。数年前まで環境対応フィルムの需要は少なかったというが、今は「環境負荷を低減した製品をラインアップしなければ顧客が付いてきてくれない。ニーズが変わってきている」(パッケージング事業総括部パッケージング開発部吉田成人マネジャー)。
同社の収縮フィルムは20マイクロメートル厚まで薄肉化を達成。またPETボトルリサイクル樹脂を最大25%使用した収縮フィルムも製品化している。今後は薄肉タイプでも同樹脂を使用したフィルム開発を進めており、24年内の製品化を目指している。
ユニチカは製造工程で出たナイロンフィルムの廃材などをケミカルリサイクルし、原料として使用した食品包装用フィルム「エンブレムCE」、ポリエステルフィルムをケミカルリサイクルした「エンブレットCE」を開発し、20年から自社の重合設備を用いて生産している。
両フィルムとも再生材料比率を50%以上にすることができ、国内を中心に採用が少しずつ増え始めている。しかし、製造コストはバージン材によるフィルムと比べ約15―20%ほど高めだ。加えて、最近では食品の値上げや原燃料高もあり、逆風下での立ち上げとなってしまった。それでも中西雅之上席執行役員フィルム事業部長は「(食品の包装用途など)市場のニーズはこれからなのでは、落ち着いたらより伸びていくのでは」と期待を示す。
PETボトルの収縮フィルムを手がけるグンゼも、製造工程での廃棄プラスチックの削減を進めている。プラスチックフィルム事業の基幹工場である守山工場(滋賀県守山市)では、自動化やデジタル技術の導入で廃プラの発生を徹底した抑えた収縮フィルム工場を6月に本格稼働したばかり。従来再利用が難しかったプラスチックなどを粉砕してマテリアルリサイクルする拠点も併設した。30年までにプラスチックグループ全体で廃プラゼロを目指す。
リサイクル材を使用したフィルムの価格は「通常のフィルムより1割程度上がる」(担当者)ため、急速な採用には至っていないのが実情。ただ食品は日々の生活に密接にかかわっており、環境意識の高まりの影響は今後避けられない。包装フィルムは商品を彩る顔となるだけに、環境負荷低減に向けたフィルムメーカー各社の開発競争は激しさを増しそうだ。