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世界初の実機試験、ボーイングが挑む「最適飛行経路で脱炭素」の全容

世界初の実機試験、ボーイングが挑む「最適飛行経路で脱炭素」の全容

成田空港に到着したボーイングのエコデモンストレーター・エクスプローラー

米ボーイングは日本など4カ国の航空当局と共同で、航空機の飛行経路の最適化による環境負荷低減の飛行試験を実施した。同社の中型機「787」を使った試験機「エコデモンストレーター・エクスプローラー」が最初の経路として、米国シアトルから成田空港まで飛行した。4カ国を回り、燃料使用量と二酸化炭素(CO2)排出量を最大10%削減できるかなどを実証する。実機での同様の試験は世界初という意欲的な取り組みだ。(戸村智幸)

6月12日午前、雨天の成田空港にエコデモンストレーター・エクスプローラーが着陸した。参加国のシンガポール、タイ・バンコクへの経路の途中に立ち寄った。ロゴはあるが内装を含め、通常の787だ。飛行経路を工夫したのが特徴だ。

TBOでは最適な経路・高度・時間を再調整しながら飛行する

軌道ベース運用(TBO)と呼ぶ、航空機の相互間隔を保ち、最適な経路と通過時刻を常に調整する手法を試験した。航空当局と航空会社が情報を共有し、カーナビのように飛行経路を修正することを目指すものだ。燃料効率の良い経路を飛行し続けることで、航空機の脱炭素につながる。4カ国の航空当局と共同のため、MRTBOという名称だ。

航空機の動作には管制機関の許可が必要なため、カーナビのようにリアルタイムに経路を修正するのは簡単ではない。条件となる航空会社と管制機関のシステム連携が進んでいなかった。

今回は4カ国の管制機関がボーイングと情報を共有することで実現した。悪天候などで運航障害が起きてもリアルタイムに把握し、飛行経路を修正できるか確認することもテーマで、途中で火山が噴火するシナリオを立て、迂回(うかい)路を提示することができた。

同社は国土交通省航空局と成田空港で会見し、研究開発担当者は「全ての航空機が燃料を10%削減できれば、航空会社のネットゼロ達成に大きく前進する」と意義を強調した。高橋広治航空局交通管制部長は「今後は航空会社、空港会社などさまざまな立場のシステムをつなぐことが大事だ」と見通した。航空局としては2040年にTBOの実用化を想定しており、前倒しも目指す。

会見にはエコデモンストレーター・エクスプローラーのパイロットも同席した。通常は自身の飛行経路が最適化されると、その影響で周囲の機体の飛行経路は悪化する恐れがあるという。それに対してTBOでは、「管制機関が一緒に、周囲の機体もどう最適化できるか考える」と従来との違いを説いた。

航空業界は50年のカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向け、主要な手段として持続可能な航空燃料(SAF)の活用を見据える。水素燃料や電動化の実現も目指している。それらに加え、TBOも有力な手段になる。

世界各国共通でTBOに対応できるかどうかや、TBOに対応する機体とそうでない機体が混在する場合の対策など普及に向けた課題はある。それらを解決できれば、脱炭素への貢献は大きい。

日刊工業新聞 2023年月7月4日

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