どうなる重工大手の航空機事業、エンジン好調も懸念材料あり
重工業大手は民間航空機事業が復調した1年だった。コロナ禍からの経済正常化で、航空業界が小型機中心に運航を再開。エンジンのスペアパーツ販売が伸び、為替の円安効果もあり、業績をけん引した。一方、米ボーイングの機体分担製造は、同社が品質問題で中断していた中型機「787」納入を8月に再開したが、各社への波及は先になりそうだ。
世界の航空会社が国内線向けに欧エアバスの「A320neo」、ボーイングの「737MAX」と単通路の小型機の運航を再開。重工大手はA320neo搭載のエンジンを中心にスペアパーツ販売を伸ばした。
エンジンに特化するIHIは復調の筆頭だ。2022年4―9月期の航空・宇宙・防衛部門の売上高は前年同期比39・4%増の1509億円になり、営業損益は123億円の赤字から188億円の黒字に転換した。
川崎重工業も主にエンジンがけん引。航空宇宙システム部門の事業損益は4―6月期は89億円の赤字だったが、7―9月期は59億円の黒字に転換した。山本克也副社長は「民間航空機エンジンの分担製造品が増えたことが売り上げに寄与し、スペアエンジンの販売増が増益につながった」と手応えを示す。
三菱重工業もエンジンのスペアパーツ販売と修理・整備(MRO)が好調。航空機エンジン子会社の長崎市の工場に第2期棟を建て、25―26年に稼働することを決めた。
エンジンは好調の一方、航空会社のパイロット不足が懸念材料だ。地域の短距離路線用のリージョナル旅客機はパイロット不足で運航が伸び悩み、IHIは4―9月期の同機向けスペアパーツ販売が想定を下回った。
機体製造は787の生産本格化がこれからだ。三菱重工の小沢寿人最高財務責任者(CFO)は「ボーイングが出荷待ちの機体を抱えており、当社の生産レートに反映されていない」と明かす。各社の生産が増えるのは23年後半との見方があり、回復途上だ。