堀場製作所子会社がマイクロプラ観測キットを開発した狙い
堀場製作所の子会社である堀場テクノサービス(京都市南区、千原啓生社長)は、マイクロプラスチックを可視化して簡易観測できる学習キット「ぷらウォッチ」を開発した。学生にマイクロプラ問題を身近に感じ、理解してもらう教材で、環境問題や国連の持続可能な開発目標(SDGs)教育を支援する。
堀場が得意とする蛍光分析の基本原理を応用したキットで、必要な道具一式を揃えている。ユーザーは河川や砂浜でサンプルとなる砂を採取するだけで準備は完了だ。まずは染色液で砂を染める。染色液には物質を溶かす液と蛍光染料が入っており、プラスチックだと表面が少し溶けて蛍光染料が吸着するため染色される。砂や石だと表面は溶けず、蛍光染料が付着しても後の洗浄工程で流れ落ちる。
サンプルを貼り付けて作成したプレパラートを箱に入れ、内蔵の発光ダイオード(LED)から緑色の光を照射すると染色されたマイクロプラだけが赤く発光。赤い光を通すカラーセロハンを貼り付けた小窓から覗くとその様子が観察できる。スマートフォンやタブレット端末のカメラ機能を使って小窓から光るマイクロプラを撮影すれば、リポートや発表用のデータとして活用することも可能だ。
ラマン分光装置や赤外線を応用した分析装置を使う一般的な分析手法は、専門知識が必要な上に前処理から分析まで数日かかってしまう。ぷらウォッチだと、サンプル採取を除けば1―2時間で観察できる。
できるだけプラスチックを使わないコンセプトで、段ボールやセロハンを採用するこだわりも特徴だ。また、ぷらウォッチを活用した出張授業などにも取り組んでおり、北海道から沖縄まで数校へ実施している。海外からのニーズもあるとし、駒谷慎太郎理事は「これまでコロナ禍であまり動けなかったが、ようやく本格的に活動できる。環境の勉強と、蛍光分析の簡単な原理も知ってもらいたい」と期待を込める。
2023年上期中の発売を目指し、価格は5万円以下で調整中。物理や化学の授業で使う実験器具を取り扱うメーカーなどへ提案する。