環境対応型商品を次々と開発する中小インクメーカーの信念
都インキ(大阪市鶴見区)は戦後間もなく創業し、一貫して印刷用インクの製造販売に携わってきた。主要顧客である印刷業界は厳しい状況が続いている。原田邦夫社長は「中小インクメーカーが大手と同じことをやっても勝ち目がない。技術力に裏付けされた付加価値の高い製品で勝負するしかない」との信念から環境対応型の商品などを次々と開発してきた。
その象徴でもある「におわなインキ」は、エンドユーザーである洋菓子メーカーの「包装紙のインク臭が気になる」との声から開発した。これは低臭のほか、抗菌作用があることが分かり、印刷用インクとして初めてSIAA(抗菌製品技術協議会)の認定を受けた。コロナ禍もあり、問い合わせが激増しているという。
「トップの役割は先を読んでビジネスモデルを構築すること」(原田社長)と、国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも敏感に反応した。そんな中、2021年8月に商品化したのが「サステナブルインク」「サステナブルブラックインク」だ。
サステナブルインクは可能な限りバイオマス原料を使用したもので、揮発性有機化合物(VOC)も使用していない。SDGsの17目標のうち「全ての人に健康と福祉を」「つくる責任 つかう責任」に対応した。
また、ブラックインクは従来、産業廃棄物として焼却処理されていた不動インクを回収し、ブラックインクとして再利用する。これもSDGsの「住み続けられる街づくりを」「気候変動とその影響に立ち向かう」などの項目に対応している。焼却による二酸化炭素(CO2)発生は2・17トンと試算されるが、再利用することで排出ゼロになる。
次の一手として取り組んでいるのが紙製の「クリアペーパーファイル」。クリアファイルは通常、石油由来の原料で作ったプラスチック製。これに対しペーパーファイルは紙を素材としており、環境負荷の低減だけでなく、簡単に印刷でき、使用後はリサイクルが可能だ。23年初頭の商品化を目指しており、プラスチックからの置き換えを狙っている。