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大手商社の通期見通しで判断分かれる、3社上方修正・3社据え置きの理由

大手商社の2023年3月期連結業績予想(国際会計基準)は、三菱商事三井物産丸紅の3社が当期利益を上方修正した。3社とも2度目の上方修正となり、資源価格の上昇などが寄与し、三菱商事と三井物産が1兆円超えとなる見通しだ。その一方で、業績が堅調に推移する中でも、インフレや各国中央銀行の利上げによる景気後退など先行きを懸念し、伊藤忠商事豊田通商双日の3社が予想を据え置いた。

三菱商事は23年3月期連結業績予想の当期利益を前回予想比1200億円増の1兆1500億円に、三井物産は同1000億円増の1兆800億円に、丸紅は同200億円増の5300億円にそれぞれ上方修正した。

三菱商事は豪州原料炭事業や液化天然ガス(LNG)関連事業の持ち分利益増加や、東南アジアでの自動車事業などが、三井物産はLNGトレーディングの増加と石炭や鉄鉱石、銅などの商品市況上昇が、丸紅は豪州の原料炭や鉄鋼製品、英国の電力卸し・小売事業がそれぞれ当期利益を押し上げる。

三菱商事の野内雄三常務執行役員最高財務責任者(CFO)は「先行きの不透明感は非常に強い。気を緩めずに手を打っていく」と述べた。

資源やエネルギー価格上昇の押し上げ効果が大きく、今後は市況の影響を受けにくい事業も立ち上げる必要がある。三菱商事は既存事業の基盤を維持・拡大するとともに、野内CFOは「EX(エネルギー・トランスフォーメーション)関連と今後の成長にバランスよく投資する」と強調。カーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)につながるEXやデジタル変革(DX)、地域創生に力を入れる。

三井物産の重田哲也常務執行役員CFOは大手給食事業者であるエームサービスの完全子会社化などを踏まえ、「市況に左右されない事業に力を入れてきたが、これを次期中期経営計画にもつなげたい」と強調。景気変動の影響を受けにくいヘルスケア事業に注力していく。

通期予想を据え置いた各社の22年4―9月期の当期利益進捗(しんちょく)率は伊藤忠商事が85%、豊田通商が87%、双日が99%といずれも高水準。だが、長期化するロシアのウクライナ侵攻、経済分断などを織り込み、3社は保守的に予想した。

伊藤忠商事の鉢村剛副社長執行役員CFOも「先行きの見通しで不確実性が大きい」と説明。豊田通商の岩本秀之取締役CFOは米国と中国の景気や為替などを踏まえ「すべてが不透明」と警戒感を示した。

日刊工業新聞2023年2月6日

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