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失注の原因は「信用調査への対応ミス」だった

小さなものづくり企業の営業改革大作戦 #4
失注の原因は「信用調査への対応ミス」だった

アイキャッチイラスト:石山さやか(@shiya07)

信用調査会社といえば、国内では帝国データバンクと東京商工リサーチが最大手で、他にも業種・業界などそれぞれに得意分野を持った調査会社が大小20社以上ある。貴社ではこれらの会社の信用調査にどのように対応しているだろうか?

中小規模の製造業の企業を回っていると、会社の基本情報や経営状況をできる限り開示したくない、と考える経営者がまだ多いように感じている。もちろん「自社の懐具合を人に見せたくない」という気持ちはよく分かるのだが、もしかしたらその対応がビジネスの障害になっているかもしれない。

信用調査について、改めて確認しよう。日本の企業間取引、特に製造業では掛け売り、請求書払いが一般的になっているので、請求書を出してから代金を回収するまでの間にタイムラグ=回収リスクが発生する。そこで新規の取引先については、支払い能力に問題がないか、債務超過に陥っていないかなどの事前確認を行うことになる。

この事前確認、顧客に直接確認できればいいのだが、これから取引するという客先に対して「御社の状況は大丈夫ですか?債務超過ではありませんか?」とストレートに聞くのは難しく、その信頼度には疑問が残る。そこで信用調査会社が第三者として両社の間に入り、調査を通じて取引を円滑化する役割を果たしているわけだ。

「調査情報なし」で取引が商社経由に

さて、調査会社の調査方法だが、まずは代表電話に連絡があることが多い。「○○リサーチと申します。社長様いらっしゃいますか?」というような電話がかかってきたとき、事務員が「社長はいません!」とガチャ切りする会社が結構あるようだ。社長に繋がったとしても「うちの経営状況なんか教えられるわけないだろう」などと冷たくあしらってしまうと、調査員は当事者を除く第三者からの情報だけでレポートを作成しなければならなくなる。
 逆に社長が求められた情報を提供し、ついでに今後の経営計画の概要を伝えるなどしてオープンに対応した場合はどうだろうか。たとえ直近期の業績が良くない場合でも、「こんな理由で○年○月期は厳しかったが、こんな対策を行って改善を図っている」など、きちんと説明されていれば、潜在顧客がレポートを見たときの印象も悪くなりにくい。

こんな当たり前のことを、なぜわざわざ説明するのか……と思われた方もいるだろう。しかし私が支援に入った会社の中で、過去に「調査情報なし」あるいは「債務超過で説明がない」ことが原因で取引口座の開設が叶わず、不利な条件で取引を開始せざるを得ないケースを何度も見てきた。せっかく取引開始の直前まで商談が進んだのに、調査会社への過去の対応の悪さが原因で止まってしまってはもったいない。

調査には誠実に対応しよう

本誌のケーススタディでご協力いただいた帝国データバンクの西崎さんによると、国内のほぼ全ての金融機関と多くの上場企業が同社の顧客として信用情報を活用しており、全国で147万件の企業概要データを保有しているとのこと。新規取引を検討中の相手先の情報がここにない場合のインパクトを考えると結構怖い。
 調査会社に渡す情報としては、沿革、代表者、株主などの基本情報、事業設備、従業員の人数、取引先などの基本情報が主で、基本情報があるだけでも印象は全然違うそう。だができれば数期分の決算情報を渡し、業績、財務情報などもレポートに記載いただければ、会社の信用度は格段に上がる。調査を受ける側はもちろん無料だ。
 西崎さんは「調査員は粗探しをしたいわけではなく、調査先の良い部分を知り、正しく把握して報告したいと考えています。正しい情報が掲載されていることがビジネスチャンスにつながると思います」とのこと。調査に協力するのはもちろんのこと、できれば会社の業績が良い状況にしておいて、ポジティブな評価をいただけるように準備しておきたい。

【POINT】
ビジネスチャンスを活かすためには
調査会社には前向きに対応しよう

貴社の営業力の現在地がわかる簡単なチャートを用意してみた。ぜひ試してみてほしい。
【中小製造業向け】営業の現在地確認チャート

<著者紹介>
ものづくりライター 新開 潤子
『小さなものづくり企業の営業改革大作戦(日刊工業新聞社)』の著者であるものづくりライター。中小製造業を中心に取材活動を行いながら、「ものづくり企業の商売繁盛を全力で応援するサポーター」として経営計画、営業の仕組み導入などのコンサルティングを行っている。
(オフィス・キートス 代表 https://office-kiitos.biz/

小さな製造業の営業は「売り込む」ではなく「売れる仕組みを作る」が正解だった――激変する経営環境の中で「営業なんてしたことない」「営業マンがいない」というものづくり企業のための、ひとりからできる「営業」の打ち手集。

書名:小さなものづくり企業の営業改革大作戦
著者名:新開潤子
判型:B5判
総頁数:104頁
税込み価格: 2,035円
<販売サイト>
Nikkan Book Store
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楽天ブックス

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小さなものづくり企業の営業改革大作戦
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製造業の営業の現場で実践して新規顧客、売上を獲得してきた具体的な方法の中から町工場がすぐに取り組める内容を取り上げ、ひとりから始められる「売れる仕組み作り」の記事を連載でお届けする。

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