工学の知識がなくても理解できる!「固定」ってナニ?

工作機械産業に関連したおすすめ書籍・雑誌【現場で活かす!技術編】

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11月16日から27日まで開催される「JIMTOF2020 Online」(主催は一般社団法人日本工作機械工業会、株式会社東京ビッグサイト)にあわせ、日刊工業新聞社が発行している書籍・雑誌の中から、工作機械産業に関連した特におすすめの書籍・雑誌を<まずここから!入門編><現場で活かす!技術編><知識の幅を広げる!発展編>として紹介します。

 2回目は「現場で活かす!技術編」です。作業効率を高め、楽な作業をサポートする治具に焦点を当てた『はじめての治具設計』(西村仁著)の一部を紹介します。
 治具は試行錯誤を繰り返しながら、現場に適した設計に作り上げるもの、という認識が多いと思います。そこで本書では、まず基本を押さえてから、治具を設計する上で必要な「メカ設計」と「作業設計」それぞれの知識を身につけます。専門用語は避け、実務上必要のない力学の計算式は省略、イメージしやすいように図表を用いるといった、工学の知識がなくても理解できる構成です。とにかく読みやすく分かりやすいです。

固定の基本

固定の原則

対象物を位置決めした後に、その位置を継続させるための「固定」をおこない、固定した状態で加工や組み立て、検査といった作業を実施します。

そのための「固定の原則」は、
 ①対象物が作業中にずれないように確実に保持すること
 ②押さえた力で変形しないこと
 ③対象物にキズがつかないこと
になります。押さえ過ぎると変形やキズが生じるため、適した押し付け力が求められます。

機構の条件

次に固定をおこなう機構の条件には、以下の3つがあります。
 ①簡単明快でシンプルな構造であること
 ②ワンタッチで固定と解除ができること
 ③締め付け力が維持されること
治具は手作業で使用するので、容易に作業できることが求められます。また3つ目の「締め付け力の維持」とは、力を加えて固定した後に、その力を取り除いても固定が継続することを意味します。固定を解除する際には、再び力を加えます。

ねじや後述するトグルクランプはこの条件を満たしています。当然のことに思えますが、もし連続して力を加え続ける必要があるならば、作業の負荷が増えます。またその対策として動力を用いると、メカ機構も複雑になってしまいます。このように「締め付け力の維持」はとても大切な条件になります。

固定には摩擦が必須

運動を妨げようとする抵抗力を「摩擦力」といいます。摩擦にはマイナスのイメージがありますが、摩擦がなければテーブルの上のモノはすべり落ち、人は地面とすべって歩くことはできず、建物は崩壊し、山は崩れて平地になってしまいます。この世は摩擦のおかげで成り立っています。

固定もこの摩擦力を活かしています。摩擦には、静止しているモノを動かそうとするときに働く「静摩擦」と、運動中に働く「動摩擦」があります。この摩擦力の大きさの度合いは「静摩擦係数」と「動摩擦係数」で表されます。

固定の力学

固定はどのような条件で成り立つのかを、簡単に確認しておきましょう。水平な台に、重量Wの対象物があり、上から外力Pが加わっているとします(図1)。このとき、横方向からFの力が加わると、反力としてu(W+P)の摩擦力が生じます。このuが静摩擦係数です。外力Fより摩擦力u(W+P)が大きければ、対象物は動かず固定された状態です。

すなわち固定の条件は、F<u(W+P)となり、このときのPが固定のために押さえつける力になります。

図1 固定の条件

静摩擦係数と動摩擦係数

静摩擦係数のuは、材質や接触面の状態で決まるため、一律に決まった定数はありません。理論上は、図2のように対象物を斜面に乗せて、傾斜角を次第に大きくして、対象物がすべり落ち始めた角度θがわかれば、「静摩擦係数u=tanθ」から導くことができます。

図2 静摩擦係数の測定

しかし実際に実験してみると、角度θは毎回ばらつくので困ったものです。経験的に、金属同士の静摩擦係数は、0.5~0.8が目安になります(図3)。

図3 静摩擦係数と動摩擦係数の参考値

(「はじめての治具設計」p.54-56より一部抜粋)
関連ページ:カメラの脚立は3本脚で机は4本脚。なぜか知っていますか?

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