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ここが変だよ!あなたの現場 !~「おかしい!」と気づき、本質を捉える現場へ~

工場管理 2022年10月号特集「気づきは改革の種 続・生産現場の“ここが変だよ!”」抜粋

「ここが変だよ!」への共感、理解 “伸びしろ”をさらに伸ばすには

2021 年10 月号特集「気づきこそ成長の糧 生産現場の“ここが変だよ!”」を執筆した。われわれ製造現場のコンサルティングを主たる生業とする者にとっては、普段の現場支援で感じていることを読者の皆様に訴える大変良い機会であったと考える。

その読者や顧客より、良い反応や評価、そして共感をいただいたことは大変嬉しく思えた半面、現在の製造現場の大変さや一筋縄ではいかないことを反映しているものと思えた。反響として大きくは2 つの傾向があることがわかった。1 つは「わかってはいるが、なかなかできない」「指示しているがうまくいかない」という何かしらの障害や活動しにくい環境があるケース。もう1 つは、「本来の意味合いを理解できた」という本質が理解され ていないケースであった。どちらも今の現場を物語っているものである。

前者は、非正規社員が多くなったことなどの労働環境の変化や、そもそも改善などの投資的時間を与えていない、問題に気づき改善する人材が少 なくなっているなどの、いわば課長級以上のマネジメントの問題が多くあると考える。後者は、本質を習う・伝承するという職場の文化形成と、本質を捉え「おかしいな」という気づく人材育成に課題がある職場と考える。どちらもネガティブに捉える必要はなく、素直に捉え行動できれば、改善し「伸びしろ」があるということと捉えてよいと思う。

そのような反響があり、その「伸びしろをさらに伸ばしたい!」ということで「続・生産現場の“ここが変だよ!”」を執筆することになった。われわれの製造現場での経験を少しでも読者の方々の業務に活かせれば幸いである。

本当に考えない現場、改善しない現場が増えているのだろうか

昨今、製造現場のコンサルティングに入ると部課長クラスから、20 ~ 30 年以上前の時代との比較をして、現在の現場の差を話題にすることがよくある。それ自体は、振返ることで次の活動につなげる意味があれば悪いことではない。ただし、そこで終わってしまっては、単にその差とその状態を論じているだけになる。ある意味では評論家的である。大切なのは、その差が出る「要因」である。先に述べた労働環境的なものや、事業環境やマネジメントの問題など諸々の観点があるはずで、その要因を深掘りすると根深いものがあると考える。その根深い要因を掘り下げると人材の要因に突き当たることが多い。

その人材面では、「問題を抽出できない」「考えない」「論理的に考えない」「改善ができない」などの言葉が要因の中に出てくることが多い。この人材面を当事者として考えた場合、育成の問題や課題であることが多い。育成の問題というと、入社してくる人材の質の話や、昨今の学校教育問題を論じる人も多いが、そのような他責的な問題ではなく、幹部や管理職にとっても育成は自責的な側面が多くある問題と捉えるべきと考える。簡単にいうと、「育たない」ではなく「育てていない」というだと思う。

改めて、強い職場を見ると監督者・管理者が育成をしっかり行っている、その育成という投資を行っている職場こそが継続的に強くなる職場と筆者は見ている。

そのような意味では、考えない現場、改善しない現場が増えているのではなく、育成していない現場が増えていると捉えているのではないかと考える。その育成の中で、今回のテーマでもある「本質」を教えることが大切で、「本質」を教えることで監督者と担当者が双方成長する「共育」となり、強い現場となっていくのである。

改めて、問題解決と改善を楽しむ職場とメンバーへ

昨年の特集でも述べたように、昨今、製造部門はコストや体制も切り詰められ、日々の生産活動で精一杯という現場も少なくない。そんな余裕のない現場であるからこそ、前述した本質を捉えて活動し、少しでも楽に儲かるよう改善を進めてほしい。常に問題意識や疑問持ち本質を見極め、改善することが製造の価値であり、人の成長につながり、会社の成長につながる。

さらに活動が推進され、発展すれば、1 人ひとりが小さいところにもギモンを持つようになり、本質的に考えることになっていく。さらには、組織としてもギモンを持ち、本質的な問題解決につながっていくと考える。本質を捉えつつ、良い意味であまり素直すぎず、「当たり前を疑うこと」が重要なのである。

自分たちの「将来のありたい姿」を描きつつ、本質を捉えつつ、問題を発見し解決していく、これらのサイクルが早く回る。これが強い現場であるとわれわれは疑わない。

本特集は以下の構成となっている。

① 現場の活力やマネジメントのあり方を問う、「マネジメント編」

② さらなる改善や継続的な改善を行うためのあり方を問う「改善の着眼編」

③ 現場では“標準化”という言葉が飛び交うが標準化の本質を問う「標準化編」

④ 生産では欠かせない設備管理や自主保全のあり方を問う「TPM・設備保全編」

⑤ 昨今、老朽化した工場・工程をDX 推進や自動化で刷新することが多いが、そのあり方を問う「工場建設・工程設計編」

これらのテーマについて本質を問う「ここが変だよ!」という切り口で論じている。

いずれの項目もわれわれがコンサルティングを行う中で発生している「ギモン」や「本質」と比較して実際に発生していることをまとめている。 少しでも読者の方々の気づきや、今後の現場運営の一助になれば幸いである。

さらには、読者の皆様の現場が強く、たくましい現場となり、その集積したものが国内製造業の強さに少しでもつながれば、著者陣としてこれ以上嬉しいことはない。

ぜひ自らの現場と照らし合せながら、ギモンを持ちながら御一読願いたい。

執筆者紹介

筆 者: 石田 秀夫(いしだ ひでお)
日本能率協会コンサルティング 取締役 生産コンサルティング事業本部 本部長 シニア・コンサルタント
所在地: 〒105-0011 東京都港区芝公園3-1-22 日本能率協会ビル7F
TEL:03-4531-4307
E-mail :info_jmac@jmac.co.jp
URL:https://www.jmac.co.jp/

雑誌紹介

雑誌名:工場管理 2022年10月号
判型:B5判
税込み価格:1,540円
【特集】
工場管理 2022年10月号  Vol.68 No.11
気づきは改革の種 続・生産現場の“ここが変だよ!”

2021年10月号特集「気づきこそ成長の糧 生産現場の“ここが変だよ!”」の続編。生産現場で当たり前、常識と化していることにメスを入れ、改善すればもっと良くなるというテーマを「ここが変だよ!」と問題提起し、改善の着眼点を提示。現状の何がおかしいのか、原因を追究する「思考力」を高めることにより、改善の深掘りを促し、考える現場の育て方を伝授する。エピソード、なぜか、解説の3つの構成で示す前回のスタイルを継続。マネジメント、改善の着眼、標準化、TPM・設備保全、工場建設・工程設計へ領域を広げて「ここが変だよ!」と思われる事象を取り上げる。個人の気づきを現場の課題として捉え、どう改善に取り組むべきかを解説。伸びる現場に導くための管理監督者の役割も示す。

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工場管理 2022年10月号特集

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