設計者が学ぶべき「強度設計」。その前提条件を考えよう
11月8日から13日までの6日間、東京ビッグサイトで4年ぶりのリアル開催となる日本国際工作機械見本市・JIMTOFが行われます。さまざまな工作機械、機械工具、機械部品などが展示され、国内外から来場者が集まります。日刊工業新聞社が発行している書籍の中から、工作機械産業に関連した特におすすめの書籍を<まずここから!入門編><現場で活かす!技術編><知識の幅を広げる!発展編>として紹介します。
最後は「知識の幅を広げる!発展編」です。多忙な設計者が強度設計の全体像を効率的に理解できるようにまとめた『図解!わかりやすーい強度設計実務入門 基礎から学べる機械設計の材料強度と強度計算』(田口宏之著)の一部を紹介します。
強度設計にかかわる不具合は安全面の問題に直結します。場合によっては経営問題にまで発展するため、強度設計に関するスキルは設計者が学ぶべきもののなかで優先順位の高いテーマといえます。
本書では、強度設計に必要な材料力学の基礎、強度計算の基本と例題、材料の基準強度の考え方、実務で使える強度設計の事例などをわかりやすく解説しています。
強度設計を行う上で考慮すべきポイント
ポイント1.材料力学活用の前提条件
材料力学は非常に有用ですが、いくつかの重要な前提条件の元に成り立っていることを理解しておく必要があります。まず、材料は(1)均質・等方性・連続体であるとみなします。すなわち加える力の方向や位置を変えても材料特性は変わらず、内部に欠陥や空洞がない理想的な材料として扱います。実際の材料は不均質・異方性の特徴や内部欠陥を少なからず持っています。また、繊維強化した材料などは顕著な異方性を示しますので、強度計算式の適用には注意が必要です。次に、材料は(2)弾性体であることが前提です。力が作用すると材料は変形します。
このとき、力の大きさと変形が比例するものを弾性体といいます。材料力学では弾性体であることを前提に、あらゆる強度計算式が導かれています。通常、材料は変形が一定以上大きくなると、弾性体の性質から大きく離れていきます。したがって、変形量が大きい場合、材料力学の強度計算式の適用は難しくなります。また、材料に加わる力は(3)静的荷重、すなわち時間軸で変化しないと考えます。急激な時間変化をする力は静的荷重と比べて材料に大きな影響を与えます。最後に(4)変形は微小変形であるということです。本書でも大きく変形しているように見える図を用いて解説していますが、実際には変形量は極めて小さいものを扱います。
ポイント2.実務で配慮すべきPoint
材料力学の強度計算式を適用するにあたっては、上述のように理想的な条件を前提とします。一方、実際の材料、製品では理想的な条件で考えることはできません。特に重要だと考える実務で配慮すべきポイントを紹介します。まず、材料強度や製品に加わる力のばらつきです。強度計算を行う際には、材料強度や力を1つの値として決める必要があります。しかし、実際には必ずばらつきを持っています。ばらつきを考慮しないまま強度設計を行うことは、強度トラブルに直結する行為です。材料の経年変化や使用環境条件の違いに関しても、材料力学では通常考慮されません。製品によっては数年~数十年以上に渡って強度を確保する必要があるでしょう。
また、使用環境条件の違いは材料選定や安全率の設定に大きな影響を与えます。材料特性の経年変化や使用環境条件を詳しく把握することが極めて重要なポイントであるといえます。
しっかりとした強度設計を行ったとしても、製品が壊れる可能性をゼロにすることはできません。不具合が起きたときの影響を考慮した強度設計を行うことが重要です。
(『図解!わかりやすーい強度設計実務入門』p.6-7より一部抜粋)
書名:図解!わかりやすーい強度設計実務入門 基礎から学べる機械設計の材料強度と強度計算
著者名:田口 宏之 著
発行月:2020年9月
価格:定価(税込)2,200円
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