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トラスコ中山の成長の軸は独自の“持つ経営”

トラスコ中山が在庫(棚卸し資産)への積極投資を進めている。2021年12月期の棚卸し資産は426億円で、決算時期を変更した14年12月期と比べて約2倍に増加。それに伴い、売り上げ規模も順調に拡大を続けている。固定資産への投資を含めた同社独自の“持つ経営”が成長の軸となっている。

「長期的な企業価値向上の視点を持ち、戦略的な財務基盤強化を推し進めることで、お客さまの利便性向上につなげる」。中山哲也社長は、資産の自社保有の狙いをこう話す。

同社は、顧客が必要とする商品をそろえ、迅速に提供することが最大のサービスの一つと捉え、これまでに、在庫や物流施設、マテハン設備、データセンターなどへの設備投資を積極的に実施してきた。それにより、総資産は年々増え続けており、21年12月期は2230億円と、12年3月期比約2・3倍に拡大した。

在庫アイテム数は現在54万アイテム以上となり、30年までに在庫100万アイテムを目指している。また、注文された商品を在庫からいくら出荷したかを示す「在庫出荷率」を「最大の経営指標の一つ」(中山社長)としている。20年12月期には91%台に到達し、今後、アイテム数を増やしつつ在庫出荷率も維持していく方針だ。

在庫が増えたことで、システム受注や素早い商品取り寄せが可能となり、従業員の残業時間の短縮にもつながるなどの副次効果も得られたという。

こうした物流機能への積極投資に向けて、17年には同社で初めて銀行からの資金調達を実施し、以降も必要に応じて借り入れを行っている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の小宮知希シニアアナリストは、「物流センターの自動化投資などの早めの投資効果が期待される」と見る。

22年12月期の経常利益率は6・0%を見込むが、17年12月期の7・5%などと比べるとまだまだ低く、投資に見合った成果の一つとして今後の収益改善が求められる。

日刊工業新聞 2022年12月29日

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