自動車・電機・機械は?…ウクライナ危機の対応、業界で差

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LNGを開発するサハリン2事業。参画する日本企業は事業を継続する方針だ

ロシアがウクライナ侵攻を始めてから3カ月が経過した。ウクライナ東部を中心に被害が拡大し、ビジネス環境は悪化しており、現地に進出する日本企業は対応を迫られている。ただ、一時的な事業停止、事業継続、撤退などロシアとの「距離感」は業界によって差がある。ウクライナ危機は長期化する様相をみせる。ロシア事業を展開する日本企業には、長期目線に立った戦略立案と、戦況変化に応じた柔軟な対応が求められる。

部品調達困難で操業停止 固定費など特損計上

トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、三菱自動車、いすゞ自動車の完成車メーカー5社はこれまでに、ロシアで車両組立工場の操業を停止した。部品調達が困難なことが主な理由で現時点で再開のめどは立っていない。

トヨタや日産などは2023年3月期にロシアで販売見通しが立たない前提で連結業績を予想。三菱自の池谷光司副社長は「1年間生産は止まると思っている」とし、現地従業員の給与といった固定費などを特別損失として計上。日産、三菱自は22年3月期にロシア事業に関連した棚卸し資産の評価損などでそれぞれ約150億円、82億円を計上した。

部品サプライヤーではティラドが23年3月期にロシア事業からの撤退に伴い5億円程度の特別損失を計上する。またブリヂストンはロシアでの工場停止に伴い22年1―3月期に127億円の減損損失を計上。原材料調達では「ロシア産の合成ゴムを天然ゴムに切り替えたりしている」(吉松加雄執行役専務)と説明した。

原材料高など間接影響懸念

電機大手はウクライナとロシア向けの事業を停止する動きはあるが、両国での事業規模は大きくなく影響は限定的だ。一方、原材料価格や世界経済へのマイナス影響が広がることを懸念している。

ソニーグループの両国の事業規模は21年度連結売上高の0・7%程度。十時裕樹副社長は「この地域に限れば業績への影響は限定的だが、今後の世界経済への影響を注視する」としている。パナソニックホールディングスの販売規模は全体の約0・2%。東芝や三菱電機も直接の影響は限られるが、各社とも原材料価格や物流費の高騰を懸念する。

日立製作所は21年度連結売上収益のうち、両国向けは1%未満。ただ、IT事業で重要な役割を担う米子会社グローバル・ロジックはウクライナに拠点がある。小島啓二社長は「紛争は長引くと考えていて、拠点は場合によって外に移す」とする。その場合でも「(同社の)営業利益率約22%の内、1―2%が落ちるくらい」とし、影響は限定的との見方だ。

需要対応へ拠点維持

機械系では建設機械がロシア向けの比重が大きい。コマツ、日立建機の大手2社は22年3月期でロシアなどCIS(独立国家共同体)向けがそれぞれ売上高の7%、4%を占めた。両社ともロシアへの部品供給は停止済みで、コマツは現地工場の生産を停止。日立建機も工場内の在庫部品で少数を組み立てている状態だ。

コマツは「現地法人の雇用は維持する。稼働率低下で空いた時間は従業員の安全教育にあてている」とし、現時点で工場閉鎖の考えはない。ロシア以外のCIS地域は従来通り事業継続中。資源高で建機の需要環境は悪くないだけに、何とか拠点を維持したいところ。

重工業ではIHIがロシア企業との自動車部品合弁会社が生産を停止した影響で、22年3月期に47億円の減損損失を計上した。車用ボディーパネルを納入する仏ルノーの生産停止のため。今後の事業継続について井手博社長は「難しいとみているが判断には時期が早い」と見通す。

サハリン事業継続 LNG代替調達難しく

先進7カ国(G7)がロシア産石炭に続いて石油の段階的禁輸を打ち出し、日本も協調する。ただ官民が出資するロシアでの原油・液化天然ガス(LNG)開発事業「サハリン1」「サハリン2」からは撤退せず権益を保持し続ける考え。サハリン1に参画する「サハリン電機石油ガス開発」に丸紅や日本政府などと出資する伊藤忠商事の石井敬太社長は「大株主である日本政府の対応に沿っていく」と冷静に話す。

日本のロシア産原油の依存度は4%。このうちサハリンからの調達分を除いた1・7%分が代替調達の対象となる。石油連盟の杉森務会長(ENEOSホールディングス会長)は「各社ともすでに準備している」と説明する。石炭のロシア依存度は11%。だが豪州やインドネシアなど比較的近い産炭国から代替調達が可能だ。

これに対しLNGは難しい。石油や石炭と異なり輸送や受け入れの技術レベルは高く、すぐに増産もできない。備蓄も不可能だ。日本のロシア依存度は9%。JERAや東京ガスなど8社がサハリンから調達する。もし欧州がロシア産天然ガスの禁輸に踏み切りLNG調達を増やせば、各国での奪い合いとなり価格は高騰する。

サハリン2に出資する三菱商事の中西勝也社長は「エネルギーの安全保障に関わる問題」と指摘する。G7の結束をにらみつつも、サハリンから簡単に撤退できる状況にはない。

日刊工業新聞2022年5月25日記事から一部抜粋

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