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M&Aで業容拡大する星光PMCが問われること

製紙用薬品の星光PMCは洋紙需要が先細りする中、塗料のベースになる原料や粘着剤メーカーをM&A(合併・買収)し、業容を拡大している。自己資本比率が70%超と財務健全性に優れ、今後は成長分野にいかに投資するか、資金の有効活用がテーマといえる。

従来は売上高営業利益率を財務指標としてきたが、2025年度以降の次期中期経営計画ではROE(自己資本当期利益率)、EBITDA(営業利益+減価償却費)などを盛り込むことを検討している。現在参考値とするROEは21年度に7・4%で、24年度には8・4%を目標とする。設備投資に伴って減価償却が増える中、中長期的な企業価値を表すEBITDAは21年度に約41億5000万円だったが、24年度の目標は約57億5000万円だ。

製紙用薬品は紙力増強剤、インクのにじみなどを抑えるサイズ剤などが主力製品。洋紙の需要が減る中で、底堅い段ボール・家庭紙分野のマシン更新期などを取り込む。これら“祖業”は荒川化学工業、ハリマ化成などが競合メーカーだが、専業の星光PMCは「限られた人数ながら直営業体制や高い生産効率が特徴」(小国正祥理事経営企画本部長)と収益性を自負する。

30年度までの戦略投資で300億円の枠を設けた。セルロースナノファイバー(CNF)など新素材とともに注目されるのが海外展開。海外売上比率40%超を目標に掲げ、22年9月にベトナム工場を稼働。これまでに化成品のKJケミカルズ(東京都中央区)、電子部品用粘着剤の新綜工業股份有限公司(台湾桃園市)を完全子会社化してきた。

足元は原燃料の高騰分を適切に価格転嫁できるかが課題だ。星光PMCは「今後はリーズナブルに資金を借りて稼ぐ必要がある」(小国理事)との認識を示す。QUICK企業価値研究所調査部の伊藤健悟シニアアナリストは「無借金経営が良いとされる時代は終わった。思い切った投資こそが成長のカギを握る」と話している。

日刊工業新聞 2023年01月05日

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