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積み増し6か月分、日本特殊陶業が調達リスクで見出す新たな在庫基準

点火プラグ、調達リスクに備え

日本特殊陶業が政策的に在庫を積み増している。物流混乱や地政学リスクによる調達・供給遅延を考慮し、コロナ禍前の2019年3月末時点と比べて、22年11月時点の在庫量(原材料や仕掛品を含む)は1・5カ月分多い6カ月分保有する。

「市場環境が変化したことで、在庫の考え方を変えざるを得ない」(磯部謙二上席執行役員)として新たな在庫適正基準を見いだそうとしている。

日特陶は10月、23年3月期の通期業績予想で売上高を当初予想比2・7%増の5858億円、営業利益を16・9%増の1122億円に上方修正した。主力のエンジン点火(スパーク)プラグの新車組み付けが増加した上で、円安による業績押し上げ効果が働く。

その一方で在庫の積み上がりが目立つ。22年4―9月期決算時点で、棚卸し資産は前年同期比約24%増の約1940億円に増加。円安の影響で海外に置く在庫評価額が高まっているものの「その影響を除いても在庫が増えているのは事実」(磯部上席執行役員)だ。在庫回転率の推移を有価証券報告書を基に見ると、年を重ねるごとに上昇する(表)。22年4―9月期決算時では全在庫を1回転させるために平均4・17カ月を要している。

スパークプラグの原材料に使うイリジウムなどのレアアースは産出国が偏るため、調達リスクを抱えながら事業活動を進めざるを得ない。その結果「納期を厳守し、計画的な売上高や収益に寄与するならば適切な量であると判断しても良い」(磯部上席執行役員)として在庫を積み増している。

スパークプラグを含む自動車関連事業は、22年3月期に全社営業利益の98%を稼ぎ出した。電動化による事業後退も懸念されるが、中古車補修用でも使われるため同社は30年代半ばまでは販売量が堅調に推移するとみる。新たな成長分野とみる医療や燃料電池への投資資金を捻出するためにも、稼ぎ頭のスパークプラグ事業に磨きをかけ続けている。

日刊工業新聞 2022年12月15日

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