ジーシーのSDGsの先駆け、高度な機器がなくても虫歯治療できる「フジIXGP」の中身
ジーシー(東京都文京区、中尾潔貴社長)は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に通ずる経営理念を掲げ、歯科材料や関連機械・器具を開発、製造、販売する。口腔保健の向上を通じ、地球社会に貢献する。大学との共同研究で新規分野の製品開発を進め、歯科医師ら向けに技術説明のセミナーなども開催。健康長寿社会の実現を目指している。
同社のSDGsの先駆けが、高度な機器や電気がなくても虫歯治療ができる「フジⅨGP」だ。虫歯の欠損部分を修復するグラスアイオノマーセメントで、世界保健機関と1994年に共同開発。虫歯予防効果が知られているフッ素を含み、粉と液を練ると団子状になる。虫歯で軟化した歯質を手用切削器具で削り、欠損部分に充填すると自ら接着する。
フジⅨGPでの治療にも通ずる考え方に、歯への負担を抑えた最小限の治療を提唱する「ミニマル・インターベンション」がある。00年に国際歯科連盟が呼びかけた。ジーシーは同年、これを診断、予防、処置・管理から達成する「MIコンセプト」を定めた。
04年に発売した「MIペースト」は歯磨き後、歯に塗るクリーム。メルボルン大学のエリック・レイノルズ教授が開発した歯に良い効能を持つ牛乳由来の成分「CPP―ACP」を配合した。不二家と期間限定でミルキー味を出すなど、フレーバーにこだわり、21年には世界で年間300万本以上を販売した。
九州大学大学院歯学研究院の石川邦夫教授が開発し、日本医療研究開発機構の援助を受けてジーシーが製品化、18年に発売したのが「サイトランスグラニュール」。顆粒状の骨の補填剤で、日本で初めてインプラントでの適用を認められた。完全化学合成の炭酸アパタイトが主成分で、時間をかけ患者自身の骨に置き換わる。
同社は東京帝国大学(現東京大学)出身の技術者3人が始め、21年に創業100周年を迎えた。今後も研究開発に軸を置き、最先端から健康長寿に貢献する。