歯科医のアイデアと応える技術、両者が結託して生まれた矯正器具
キリシマ精工 次世代歯列矯正器具超小型ブラケット
キリシマ精工(鹿児島県霧島市)は歯の裏側に取り付ける「次世代歯列矯正器具超小型ブラケット」を開発した。矯正歯科医師が長年温めてきたアイデアと同社独自の精密切削加工技術が結びついて生まれた。患者は物理的にも精神的にも快適に矯正治療を受けられる。矯正歯科医は正確で効率が良い狙い通りの歯列矯正ができる。患者と歯科医師の双方がメリットを享受できるのがポイントだ。
超小型ブラケットを生み出すのは同社の独自技術「カーブカット工法」だ。同工法はマシニングセンターによる一発加工が特徴。そのため生産工程やコストを削減し品質が安定する。短納期も可能とした。同ブラケットも同工法で一つずつ無垢(むく)の金属素材から成型する。
同ブラケットは前方から見えにくいので人目が気にならない。表面は研磨仕上げを施しており舌による違和感や滑舌への影響は小さい。矯正のためのワイヤを通すブラケットの溝は、歯列に沿ってラウンド加工するので、歯科医師からも狙い通りの矯正トルクが効率よく歯に伝わると好評だ。
同ブラケットは福岡市で矯正歯科クリニックを開業する下田哲也歯科医師のアイデア。両者の出会いは日刊工業新聞社主催の「モノづくりフェア2014」だった。出展中の同社に下田氏から提案があった。下田氏は「アイデアを具現化する先端技術と出会えた。課題だった患者の快適性がクリアできる高精度な器具が実現した」と振り返る。
2015年に同社と下田医師と二人三脚で開発を開始、16年に特許を出願した。19年10月に医療器具や歯科材料を販売するジーシー(東京都文京区)に製品供給を開始。全国の歯科医向け販売となった。キリシマ精工の西重潤一営業課長は「今後、同ブラケットの製造をきっかけに医療関連の事業化も検討」している。(九州中央支局・勝谷聡)
日刊工業新聞2020年5月21日