東工大・東京医科歯科大が統合、相乗効果創出の難しさ
東京工業大学と東京医科歯科大学が一つの大学に統合し、医工連携で新産業創出を目指す。理工学と医歯学に情報学や人文社会科学を加えた融合領域の教育研究を進める。専門大学の統合で総合大学化を目指す流れが広がる可能性がある。(小寺貴之)
両大学は3カ月間で34回、60時間以上の協議を経て1法人1大学に統合することを決めた。それぞれの大学名を捨て新しい大学として再出発する。2024年度をめどにできるだけ早い時期に統合する。事業規模は両大学を合わせて1290億円と北海道大学や筑波大学を抜いて国立大では7番目になる。
統合の旗印として、多分野の学問を融合させ収束させるコンバージェンス・サイエンス(収束の科学)を掲げた。東工大の工学系研究者にとっては医科歯科大の大学病院という社会実装の場を得る。医科歯科大の田中雄二郎学長は「ニーズを提供する医学部、シーズを提供する工学部という従来の連携ではなく、ともに新しい産業を創る」と説明する。
ただ日本には総合大学がすでにある。一つの大学の中で工学系と医学系の連携を深めてきた。このため、統合しても同じ土俵に立つことになる。東工大の益一哉学長は「意志と志が違う。融合を前提にゼロベースで仕組みを作る」と説明する。そこで両大学の融合の地となる新キャンパスを構想している。場所や規模は未定だがコンバージェンス・サイエンスを実践する場を設ける。
田中学長は「融合効果は研究よりも教育が先に現れるだろう」とする。工学系と医学系の学生が互いの現場で学ぶ教育カリキュラムを作る構想だ。両学問を学んだ学生がけん引し、研究者の融合を後押しする。
こうした新分野への挑戦には10兆円規模の大学ファンドからの支援が欠かせない。田中学長は「統合の目的ではないが、統合を実現する有力手段」と説明する。同ファンドからの支援は数百億円とされ、新大学の事業規模の1―2割に上るとみられる。統合の目標である新産業の創出には一つの学問では足りない。大学の知を社会実装する観点からも総合化がいっそう求められる。