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健康寿命の”鳥居”守る!エア・ウォーターの歯の神経再生技術がスゴイ

健康寿命の”鳥居”守る!エア・ウォーターの歯の神経再生技術がスゴイ

歯髄の再生に必要な歯髄幹細胞を取り扱う作業(エア・ウォーター提供)

人生100年時代に突入し、個人の健康管理は重要性を増している。その中でも歯のケアは健康に直結する。健康・医療を事業の柱に据えるエア・ウォーターは、虫歯治療などの過程で抜いた歯の神経を再生する取り組みを進める。自分の歯を利用した従来の治療法に加え、他人の歯を活用した治療法も模索する。歯の神経の再生は歯の寿命とともに、健康寿命の延伸につながる。歯科治療の最前線を追った。(大阪・冨井哲雄)

重度の虫歯の治療では、血管や神経などを含む「歯髄」を取り除く方法が取られる。歯髄を取り除くと痛みは取れるが、歯に栄養を送る機能がなくなり、いずれ歯を失うことになる。エア・ウォーターの子会社であるアエラスバイオ(神戸市中央区)の取締役で、RD歯科クリニック(同)の中島美砂子院長は「歯にとって歯髄は“神社の鳥居”。取り除くと大変なことになる」と歯髄の重要性を強調する。

アエラスバイオは2018年から歯髄を再生する治療法を世界で初めて実用化。20年から同クリニックで治療を始め、今では全国6カ所の歯科医院で治療を受けられる。治療に使うのは「歯髄幹細胞」と呼ばれる歯髄の元になる細胞。患者の奥歯にある「親知らず」など不要な歯から歯髄幹細胞を採取し、培養皿で増殖させ、歯髄を抜いた歯の内部に移植する。歯の下部の組織から血管や神経などを引き込み、約3カ月で歯髄を再生できる。「歯髄を再生し歯の寿命を延ばせれば、インプラント(人工歯根)の導入時期を遅らせられる」(中島院長)。

今までの治療件数は18例。ほとんどの事例で歯髄の再生を確認した。菊地耕三アエラスバイオ社長は「23年度末までに治療できる医院を20施設に増やしたい」と意気込む。

歯髄再生治療のイメージ(エア・ウォーター提供)

次の段階として、他人の歯を利用し患者の歯髄を再生する試みも始まっている。すでに厚生労働省の特定認定再生医療等委員会で他人の組織を使う「他家移植」による計画の審査が進行中だ。今後、厚労省の厚生科学審議会の認定を受けられれば臨床試験を始められる見込みで、「23年度末の開始を目指す」(菊地社長)としている。エア・ウォーターの豊田喜久夫会長は「孫の抜けた歯を活用し歯髄を再生できるのではないか」と期待する。

一方、歯髄再生治療の普及に向けた課題は多い。歯髄の周りには細菌の塊「バイオフィルム」が存在し、歯髄の再生に悪影響を与える。中島院長は「歯の根の部分を無菌化することが大切。実施する歯科医に施術のやり方をしっかり守ってもらうことが重要」と強調する。現状ではバイオフィルムを外科的に取り除くことは難しい。そのため「化学的に取り除く方法を模索している」(中島院長)。

現在、歯の歯髄を作る研究とともに、歯髄の上にある「象牙質」を再生する研究も行っている。中島院長は「歯を抜かずに済む治療法を目指す」と、生活の質(QOL)の向上につながる未来の歯科治療の確立を目指す。

日刊工業新聞 2022年12月05日

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