迫るCFRP廃棄時代、航空業界で盛り上がる「rCF」の可能性
品質・コストなど実用化へ課題解決
リサイクル炭素繊維(rCF)の普及に向け業界の動きが活発化してきた。航空機などで大量に採用された炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が、いよいよ廃棄される時代が目の前に迫りつつあるからだ。しかし現状は埋め立て処分が大半で、製造時に多大なエネルギーが必要な点も課題となる。そのためrCFを活用した、ライフサイクル全体での環境負荷低減が求められ始めた。
米ボーイングの主力航空機であるボーイング787型機では、機体の約半分(重量ベース)をCFRPが占めるという。重量が燃料費に大きく響く航空機では、軽量・高強度なCFRPが機体や構造体、筐体(きょうたい)などに多く採用され、長期運用により二酸化炭素(CO2)排出削減の効果への期待も大きい。また航空機に限らず、炭素繊維(CF)の可能性は拡大する一方だ。
だがCFRPの素材となるCFは製造時にエネルギーを大量に消費するのも事実。同じ重量当たりのCO2排出量は、バージン素材の場合は鉄鋼の約10倍にも上る。そこでCFユーザーから注目されているのが、炭素繊維のリサイクルだ。リサイクル炭素繊維の量産に取り組む富士加飾(兵庫県小野市)の杉野守彦社長は「急速にrCFが盛り上がっている。CO2削減へのプレッシャーが増している」と指摘する。同社によるとrCFの場合、CFRPやプリプレグなどの引き取りから、熱分解の乾留処理や、糸として取り出すまでに排出するCO2量は鉄鋼とほぼ同等の水準になる。
そのためCFメーカー自身も原糸の売りっぱなしではなく、廃棄材料から再びCFを再生するリサイクルに力を入れ始めている。世界首位の東レは、豊田通商などと革新省エネルギー熱分解炉を開発し、2016年度にパイロットプラントを設置した。バージン素材を製造するのに比べ10分の1のエネルギーでCFを抽出できる。
同プラントでは廃材を破砕・熱分解し、取り出したCFを「チョップド」と「ミルド」に分級して出荷。チョップドCFは樹脂と混ぜて射出成形品に、ミルドCFは樹脂やゴムの導電性・耐熱性の改良用素材として活用する。リサイクル技術の確立についてはめどがつき、実用化に向け品質やコスト、安定供給などの課題解決に取り組んでいる。