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ホタテの養殖が農業に近いのはなぜ?

【連載#4】北海道胆振地方の有望企業
ホタテの養殖が農業に近いのはなぜ?

人材育成し、漁業の未来を創造する

*<山下機械店>
 駒ヶ岳や有珠山などの多くの活火山に囲まれる北海道の内浦湾は、地域の人々からは噴火湾と呼ばれている。昭和40年代にホタテ貝の大規模養殖に成功したこの地で、漁業者の声をくみ上げ、養殖に関わる機器の提案やメンテナンスを一手に引き受けるのが、噴火湾ホタテ養殖発祥の地・豊浦町にある山下機械店だ。もともとは金物修理などを手がけていたが、湾内の養殖業者からの困り事がきっかけで養殖機器の開発・整備に着手。現在では、エンジンの交換整備などを含め、年間の売上げは10億円にも上る。

 「種をまき、中間管理を行って出荷するホタテの養殖は農業に近い」(山下圭一社長)。収穫して販売する過程で様々な課題が発生する。同じ町内でホタテの加工販売を行う北海スキャロップは、手作業の煩雑さや人手不足から、加工工程の自動化を同社に打診。こうした相談を受け、2018年から新たな加工装置の開発事業に取り組んできた。具体的には、殻のまま茹で、振動を加えることで殻から身を分離させる装置で、機械化により貝柱の形状変形を防ぎ、加工時間の短縮による衛生面の向上が期待できる。開発には「30年来の強い絆で結ばれている」(山下社長)佐呂間町の森機械製作所も参画。企画・販売・メンテナンスは山下機械店、試作・完成品製造は森機械製作所が担うというスタイルだ。

森機械製作所とは様々な装置開発で連携

 1年程度北海スキャロップ内で試作機のテストを重ねて製品化する予定。同事業は北海道経済産業局から地域産業資源活用事業計画の認定を受けるなど、地域の水産加工事業者を支える装置として期待されている。

 また同社は、人材育成にも力を入れる。伊達市内で社会人野球チームに所属するメンバーを社員として雇用しているほか、今月ベトナム人女性2人を常勤で採用。「漁業機械の世界は世間的な認知度は低いが、若者や女性が働きやすい環境を整え、漁業の未来を創造していきたい」と山下社長は力を込める。

 「漁業者からの要求は早朝、休日など時間を選ばない」(同)。常に機敏な対応を求められるからこそ、同社のような地域密着型で小回りのきく企業の存在価値は、中山間地域の小規模事業者にとって必要不可欠なものとなっている。

所在地=北海道虻田郡豊浦町字礼文華73-5、社長=山下圭一、設立=1984年(昭和59年)、資本金=300万円、社員数=22人

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<北海道プラテック>


贈答用食品トレーを丁寧な手作業で仕上げる

サンマからタラコへ


 北海道プラテック(安平町)は、発泡スチロールの裁断・加工を手がける北海道唯一の専業メーカーだ。発泡スチロールは魚箱や緩衝材、建設用資材などに加工される。排気筒の断熱材、保冷車の部材として納入する場合も。したがって顧客も多岐にわたっている。
 
 高さ3メートルの発泡スチロールブロックを仕入れ、顧客ニーズに合わせて加工する。業界全体では機械化が進んでいるが、手作業の仕上げ工程を残していることで小ロット品にも対応。「他所で断られたものでも引き受けられる」(島田裕之社長)のが強みだ。
 
 安平町は胆振東部地震の震源地に近い。同社では幸い人的被害、建物の大きな損傷は無かったとはいえ、事務所や工場では備品や材料が散乱し片づけに時間を要した。停電で工場の稼働もままならず、復旧したのは4日目だった。この間に痛感したのは地震の被害と復旧のスピードには地域差があること。安平町内でも電気や水道が早く通じた地区もあれば、時間がかかった地域もあった。
 
 同社では電気が止まり工場がストップしている間、他の工場も操業できないだろうから納期は伸びると思っていた。建築関連資材、特にユニット化するものについては主にメーカーの工場に納入する。一方で土木関連資材は工事現場に直接持ち込むことが多い。「ところが現場は停電に関係なく動いており、停電中も注文が舞い込んできた」(同)。4日間の休業分を取り戻すため、しばらくの間は残業体制が続いた。

ホロー桁向け大型加工品を手にする島田裕之社長

 現在、同社の売上に大きく貢献しているのがホロー桁の中空材加工だ。コンクリート製橋桁の強度を損なわず軽量化するもの。発泡スチロールは鉄骨とコンリートの伸縮差も緩衝してくれる。大型の製品であり1か月の養生期間が必要なので、保管用の敷地面積が必要。それゆえ北海道は適地といえる。ただ道外からの問い合わせもあり、「製品価格に対して輸送コストがかかりすぎるので、顧客に近い工場を紹介している」(同)という。

 発泡スチロールで一般的にイメージしやすいのは食品用トレーだろう。同社でロングセラーになっているのは贈答用タラコの箱。微妙な傾斜をつけてタラコの見た目をよくする工夫がされている。「かつてはサンマ用が主流」(同)だったもので、時代とともに食材も変遷している。

所在地=北海道勇払郡安平町追分弥生139番地2、社長=島田裕之氏、設立=2000年(平12年)、資本金=1000万円、社員数=15人

北海道プラテックホームページ


連載「北海道胆振地方の有望企業」これまでの記事はこちら

【連載#01】北海道胆振地方の有望企業

【連載#02】北海道胆振地方の有望企業

【連載#03】北海道胆振地方の有望企業

【連載#04】北海道胆振地方の有望企業

【連載#05】北海道胆振地方の有望企業

【連載#06】北海道胆振地方の有望企業

【連載#07】北海道胆振地方の有望企業


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