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トヨタの調達責任者が今、考えていること

白柳常務役員に聞く「(『TNGA』は)次の切り替えに向けては反省も必要」
トヨタの調達責任者が今、考えていること

TNGAによる新車台

 電動化や自動運転などの技術革新に伴い、自動車産業が大きな変革期を迎えている。また米国が自国優先主義に傾くなど、世界経済を取り巻く環境変化も加速。そうした中、魅力的な車作りと競争力の維持・強化に向けて、部品・部材の調達にどう取り組むのか。トヨタ自動車の調達担当、白柳正義常務役員に聞いた。

 ―社内カンパニー制を導入しましたが調達での変化は。
 「約1年が経過し、かなり小さな単位で意思決定のサイクルが回り始めている。調達はカンパニーの外にいるがカンパニーとバイヤーやサプライヤーの声がすぐに伝わるようにしている。一方、地域軸やカンパニー軸の横串はしっかり通し、競争力をオールトヨタで最大化していくことも調達の役割だ」

 ―魅力的なクルマが出てきていますが、市場では価格が高いとの声もあります。
 「(新設計思想)『TNGA』の導入が新型プリウスから始まり(ほかの車種でも)切り替えが進んでいく。それぞれの部品も競争力が磨かれた。だが、次の切り替えに向けては反省も必要だ。法規制や環境対応などが各地域で増え、大きな技術変革もある。今年は次に向けて競争力を上げるための弾込めを始めたい」

 ―自動運転など先進技術の機能の充実が進んでいきます。
 「ソフトや電子部品の原価ウエートに占める割合が大きくなるのは間違いない。原価低減の進み方も激しいので実際どうなってきているか勉強している」

 ―燃料電池車を20年以降に年3万台以上生産販売する目標です。
 「開発が佳境に入り、苦労しながら取り組んでいる。台数が増えるので従来のつくり方や材料、工法だとつくりきれなかったり、高かったりするので、お客さまに買っていただけるレベルのつくり方ができるか技術部と一緒に進めている」

 ―完全子会社化したダイハツ工業に学べという声も聞きますが。
 「言い訳せずに負けているところは負けていると認めて、謙虚に学ぼうと調達部門では徹底している。実際にトヨタが勝てていない地域もたくさんある」

 ―自然災害や事故対応などの対策は。
 「昨年は事故や熊本地震の影響で稼働を止めて迷惑を掛けた。東日本大震災以降、サプライチェーンも相当調べシステムもつくったが、まだやれていないことがあった。事故の未然防止、代替生産の実行力、早期復旧の三つの軸で昨夏から取り組んでいる。平時の問題解決力や現場に寄り添った対策が大事だ」
(聞き手=名古屋・今村博之)
日刊工業新聞2017年7月12日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
カンパニー制の導入やTNGAの本格展開など、近年のトヨタは挑戦する局面が増えているように感じる。先進技術の開発競争や利幅の少ない小型車での一層の原価低減など、クリアすべき課題も立ちはだかる。グループや系列の結束力の強さをどこまで生かして競争力強化につなげていくのか注目したい。 (日刊工業新聞名古屋支社・今村博之)

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